研究課題
研究代表者らはABO式血液型遺伝子の転写制御機構を調べ、プロモーター、血球系細胞特異的エンハンサーを同定し、ABO式血液型亜型の遺伝子診断に有用な情報を得ることができた。一方、上皮細胞における転写調節機序が不明であったことから、DNase I hypersensitive site、クロマチン修飾、転写因子結合等のゲノムアノテーションデータを利用し、遺伝子下流約2.6-kb(+22.6-kb site)を転写活性化領域と想定し、ルシフェラーゼアッセイにより転写活性を測定し、ゲノム編集技術を用いて+22.6-kb site欠損胃癌培養細胞を作製し、遺伝子発現が約半分に低下することをqPCR、RNA seq、フローサイトメトリーを用いて観察した。さらに、+22.6-kb siteに上皮細胞特異的転写因子ELF5が結合することをゲルシフトアッセイ、ChIPアッセイ等を用いて証明し、ルシフェラーゼアッセイやshRNAを用いたノックダウン実験により、ELF5が+22.6-kb siteにおいて機能することを示した。以上より、ELF5が結合することにより、+22.6-kb siteが上皮細胞特異的エンハンサーとして機能することを明らかにした。この発見により、ABO遺伝子の発現が、血球細胞では第一イントロン内のエンハンサーとプロモーターによって、上皮細胞では遺伝子下流のエンハンサーとプロモーターによって制御されることが判った。血球細胞特異的エンハンサーには細胞特異的転写因子GATA2が作用し、上皮細胞特異的エンハンサーには細胞特異的転写因子ELF5が作用し、それらの因子の欠損する細胞ではABO遺伝子は発現しないことになる。以上より、ABO式血液型遺伝子の転写制御機構はほぼ解明されたと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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