研究課題/領域番号 |
26293163
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
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研究分担者 |
野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 体内時計 / 脳浮腫 / 水中毒 / アセトアミノフェン / 死亡時刻推定法 |
研究実績の概要 |
熱中症モデルおよび低体温モデルマウスにおける抹消体内時計の変調を時計遺伝子、Bmal1とPer2の遺伝子発現に基づいて解析したが、有意な変調を見出すことが出来なかった。更に、ペントバルビタールをもちいて薬物中毒の抹消体内時計に対する影響の検討を試みたが、こちらも有意な変化を見出すことが出来なかった。 そこで、より強く中枢体内時計に影響を及ぼす事が予想される脳浮腫モデルについて二つのマウスモデルを用いて検討を行った。一つは水中毒モデルで、バソプレッシンを含む蒸留水を体重の19%投与し12時間後に心臓を採取して、時計遺伝子の発現を解析したが、遺伝子発現に有意な変化を見出せなかった。しかし、蒸留水投与2時間後の心臓では時計遺伝子の発現が有意に変化している事を見出した。蒸留水投与2時間後では著明な神経症状を伴って強い脳浮腫を呈しており、脳浮腫が抹消体内時計に強く影響する可能性が示唆された。 もう一つのモデルは急性アセトアミノフェン中毒による肝不全とそれに起因する肝性脳症のモデルであり、致死量のアセトアミノフェンを腹腔に投与して死亡時、生存の場合は24時間後に心臓を採取して時計遺伝子の発現を解析した。アセトアミノフェンを投与したマウスでは血清ALT,ASTが著しく上昇し、病理組織学的変化も著明であり、肝不全による死亡が明らかであった。脳浮腫や血清アンモニアについては解析していないが、昏睡状態が認められたことから肝性脳症により強い脳浮腫が誘起されていた可能性が高い。アセトアミノフェン中毒マウスの心臓における時計遺伝子の発現変調は、水中毒モデルのそれに比較してより高度であり、脳浮腫に加えて血清アンモニア濃度も体内時計に影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱中症モデルおよび低体温モデルマウスにおける抹消体内時計の変調を時計遺伝子、Bmal1とPer2の遺伝子発現に基づいて解析したが、有意な変調を見出すことが出来なかった。更に、ペントバルビタールを用いて薬物中毒の抹消体内時計に対する影響の検討を試みたが、こちらも有意な変化を見出すことが出来なっかた。 しかし、より強く中枢体内時計に影響を及ぼす事が予想される脳浮腫モデル(水中毒モデル、アセトアミノフェン肝不全モデル)について検討を行い、脳浮腫が心臓の体内時計に強く影響を与えることを見出した。よって、29年度は脳浮腫の体内時計への影響に焦点を絞り当初の目的を達成する。 これまでに得られた研究の成果は、9月に開催される国際学会10 th International Symposium Advances in Legal Medicine で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は水中毒、アセトアミノフェン肝不全モデルにアゾキシメタン肝不全モデルを加え、これらのモデルにおける脳浮腫の程度と時計遺伝子の発現変化を詳細に解析する。更に、脳浮腫を呈する剖検事例における体内時計についても解析を行って中枢時計の変調が末梢の体内時計に及ぼす影響を明らかにする。 本年は最終年度であり、成果の取り纏めを行いできるだけ早く投稿することを目指す。
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