研究課題/領域番号 |
26293164
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
木林 和彦 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20244113)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳神経外傷 / 外傷性脳損傷 / 急死 / セロトニントランスポータ / 脳脊髄液 / 浸透圧 |
研究実績の概要 |
頭部外傷患者では脳損傷を受傷直後に心停止を来して急死することがある。受傷直後に死亡した患者の法医解剖では、脳浮腫や脳ヘルニアが形成されていなく、頭部外傷を死因とすることが困難である。頭部外傷が心停止を来すメカニズムの解明は法医解剖での死因の診断に有用であり、患者の救命にも役立つ。本研究では脳損傷のモデル動物を用いて脳幹部損傷の診断方法を考案し、頭部外傷が脳幹部の損傷を来して心肺停止による急死を生じ得ることの証明につなげる。 ラットに脳挫傷作成装置(pneumatic impact device)を用いて大脳皮質に局所性脳損傷を形成し、脳幹部を含む脳内セロトニントランスポータのmRNAと蛋白の発現を免疫組織化学、in situ hybridization、Western blotで調べたところ、大脳皮質で発現が低下していることを確認した(Neurological Research印刷中)。 また、局所性脳損傷モデルは脳幹部損傷を来しにくいため、weight drop法でマウスの脳にびまん性脳損傷を作成し、脳幹部を含む神経細胞の変性を組織学的に検索したところ、外傷による心肺停止は約50%に認められ、海馬に神経細胞死が認められた(投稿中)。 ついで、ラットのくも膜下腔に高浸透圧液を注入し、痙攣と呼吸不全の状態を観察し、脳幹部にマイクログリアの活性化を認め、高浸透圧液は脳幹部を障害して急死に至ることが示唆された(投稿中)。 さらに、頭部外傷の法医解剖例の中から受傷直後に心肺停止を来した事例を抽出し、急死の機序を考察した(本学倫理委員会承認研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局所性脳損傷のモデル動物において脳幹部を含めた外傷による変化を観察し、研究結果は国際的に評価された海外の学術誌に採用された。びまん性脳損傷モデルで脳幹部を含む外傷による変化を観察し、研究結果を学術誌に投稿中である。さらに、高浸透圧液のくも膜下腔投与による脳幹部損傷による急死のメカニズムを捉えることができ、学術誌に投稿中である。総合的に本研究は概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
びまん性脳損傷モデルを用いて脳幹部を含む脳の病態生理を解析する。
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