研究課題/領域番号 |
26293167
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
里 直行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (70372612)
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研究分担者 |
田中 稔久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294068)
村山 繁雄 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, その他 (50183653)
宮崎 早月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60452439)
内尾 こずえ 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, 研究員 (70373397)
上田 裕紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90543463)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症 / 糖尿病 / 神経変性 |
研究実績の概要 |
In vivoにおけるベータ・アミロイドに対する恒常性維持機構の解明と糖尿病による破綻を調べる。我々が開発した糖尿病合併ADマウス(APP+ob/obマウス)では脳内のインスリン・シグナリングの低下を認め、さらに我々は18ヶ月齢の高齢糖尿病合併ADモデルにおいてタウのリン酸化亢進を見出した。興味深いことにADマウス(APP, Amyloid Precursor Proteinマウス)、糖尿病マウス(ob/ob、レプチン欠損マウス)ではタウのリン酸化はコントロール・マウスと同程度であるのに対し、糖尿病合併ADマウスのみにおいてタウのリン酸化亢進が認められた。 一方、in vitroアッセイ系では,ベータ・アミロイド産生細胞と初代神経細胞を共培養させることにより,ベータ・アミロイド依存性に異常なタウのリン酸化が生じる。これらの結果からin vitroではベータ・アミロイドがタウのリン酸化を誘導するが、in vivoではベータ・アミロイドのみではタウのリン酸化を誘導せず、糖尿病によって顕著に促進される、すなわち生体内ではベータ・アミロイドに対して恒常性維持機構が働いていることを示唆している。この恒常性維持機構とは何なのか、そしてその糖尿病による破綻の機序を明らかにする。その候補として1)インスリン・シグナリング、2)アストロサイトーミクログリア系、3)未知の因子を考えている。ウエスタン、免疫染色、RNA-sequence法を用いてWT, APP, ob/ob, APPob/obの4群での違いが見られる事象を明らかにする。そこで得られた結果をin vitroの系において因果関係を明らかにする。例えばインスリン・シグナリングや未知の分子のノックダウンがベータ・アミロイドとsynergisticにタウのリン酸化を促進するかを検討し、事象の因果関係を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病合併アルツハイマー病モデルマウスの脳における遺伝子発現の解析結果が判明しつつある。また発現の変化が認められた遺伝子を初代神経細胞を用いて過剰発現あるいは発現抑制し、神経軸索などの変化を調べている段階である。よって研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
脳内βアミロイドの発現を制御できるテット・オフAPPマウスを用いた恒常性維持機構とその糖尿病による破綻機序の解明を行う。Tet-offのシステムを用いて、脳内βアミロイドの発現を制御し、ADにおける恒常性維持機構を解明する。Tet-offのvector (ROSAtTA)にAmyloid Precursor Protein (APP)swedish変異を導入したコンストラクトを用いてマウスを作製し、以下の実験を行う。 1) βアミロイドの発現により、恒常性維持機構を惹起させる。 2) 高脂肪食により糖尿病の病態を惹起した後で、βアミロイドの発現を導入する。この場合、恒常性維持機構は働かないと想定している。 3) βアミロイドの発現により恒常性維持機構を惹起させた後、高脂肪食により糖尿病を発症させる。この場合、それまで働いていた恒常性維持機構が破綻すると想定している。 Western Blotting、免疫組織化学に加え、我々の開発したマイクロダイアリシス、RNA-Sequence法を用いて恒常性維持機構およびその破綻の分子機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画していた実験が遅延し、当初予定していた特定の実験の為に計上していた予算を使わなかった為。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に遅延した実験計画がおおむね予定どおりに回復してきたため、本年度に昨年の計上していた実験を行う。
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