研究課題/領域番号 |
26293169
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
六反 一仁 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10230898)
|
研究分担者 |
井本 逸勢(橘逸勢) 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30258610)
桑野 由紀 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00563454)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ストレス脆弱性 / エピジェネテック / 非コードRNA / DNAメチル化 / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
平成26年度は研究計画に沿って以下の研究項目を実施した。 1.健常コホート集団における気分障害の発症とその要因並びにエピジェネテイック機序の解明:民間病院職員180名を対象に、高不安と高度の抑うつを訴えるハイリスクグループを対象に、気分障害と関連する末梢血マイクロRNAとしてmiR-144を同定した。さらに、miR-144の標的遺伝子のなかから不安・うつ状態と関連する遺伝子の同定に成功した(現在論文作成中)。さらに、DNAメチル化アレイを用いて健常人ハイリスクグループと健常コントロールそれぞれ10名を対象に解析し、検出したDNAメチル化のなかでNF-kappaB関連遺伝子のメチル化の変化をビスルファイト・シークエンス法により確認した(現在論文作成中)。2.慢性疲労症候群の自然免疫関連遺伝子発現亢進のエピジェネテイック機序の解明:マイクロRNAアレイを用いて関連候補マイクロRNAと標的遺伝子の探索を行い、CFS群で特徴的な6種類の炎症関連マイクロRNAの発現変化とCFS群において、タンパク質合成・分解系の遺伝子が顕著に亢進することを確認した。現在、CFS患者28名とコントロール28名を対象に、リアルタイムRT-PCRによる確認作業を行っており、平成27年度位に誌上発表する。3.自閉症スペクトラム(ASD)関連遺伝子の発現異常のエピジェネテイック機序の解明:ASDについては20名のASD患者を対象に解析を進めている。マイクロRNAアレイで48マイクロRNAの発現異常を見出し、現在リアルタイムRT-PCRを用いた確認作業を行っている。現時点で4つのマイクロRNAの発現異常を確認した。さらに末梢血を用いて、次世代シークエンサー解析を行った。個人差が大きく費用対効果の問題から、平成26年度は予備的な解析にとどめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していた1.健常コホート集団における気分障害の発症とその要因並びにエピジェネテイック機序の解明、2.うつ病特異的に発現低下をきたす遺伝子のエピジェネテイック機序の解明、3.慢性疲労症候群の自然免疫関連遺伝子発現亢進のエピジェネテイック機序の解明、4.ASD関連遺伝子の発現異常のエピジェネテイック機序の解明の各研究項目の中で、健常コホート、慢性疲労症候群、ならびに自閉症スペクトラムの解析については、短期間に予想以上に研究が進展し、平成27年度中には誌上発表できる予定である。うつ病の解析に関しては、ヘテロな集団であることから解析が進んでいない。また、次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq解析の解析に関しては、網羅的な解析を行って個人差が大きく費用対効果の問題があるため、並行して進めているin vitroの解析のサンプルを対象に、ストレス応答性RNA分子を特定し、臨床検体で確認する作業へと展開する予定である。このように、予想以上の成果を挙げた研究項目と問題点が明らかになった研究項目があり、全体的にはほぼ予想通りの結果を挙げたと自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度も引き続き、1.健常コホート集団における気分障害の発症とその要因並びにエピジェネテイック機序、2.うつ病特異的に発現低下をきたす遺伝子のエピジェネテイック機序、3.慢性疲労症候群の自然免疫関連遺伝子発現亢進のエピジェネテイック機序、4.ASD関連遺伝子の発現異常のエピジェネテイック機序の解明を行う。平成26年度に得られたデータをもとに、健常コホート、慢性疲労症候群、自閉症スペクトラムの解析結果を4編の論文として誌上発表する。各疾患群50例を目標に、リアルタイムRT-PCRによる非コードRNAとスプライスバリアントの定量測定を行う。慢性疲労症候群の解析では、既に同定した疾患特異的マイクロRNA遺伝子のメチル化の解析を行う。検出した重要遺伝子のメチル化は、ビスルファイト・シークエンス法による確認作業を行い、発現異常のエピジェネテイクスを明らかにする。自閉症の解析では自閉症関連遺伝子(SHANK, FMR1, MECP2, NEDD4L)を中心に、自閉症フェノタイプ関連マイクロRNA-標的mRNAマイクロRNAを同定する。また、MECP2を用いたChip-Seq解析を行い、クロマチン修飾と遺伝子発現異常の関連性も検討する。各疾患の発現解析結果をもとに、マイクロRNAを中心とした非コードRNA分子の標的遺伝子の確認作業を行う。ストレス特異的選択的スプライスバリアントの機能解析も進め、バリアントの細胞内機能を明らかにし、ストレスコーピング反応並びにストレス脆弱性との関連を調べる。平成27年度は、ヒトで確認した非コードRNA、スプライスバリアント、あるいはRNA結合蛋白質の機能解析が重要なポイントになる。平成27年度中に、重要な新規RNA分子については、安定過剰発現細胞とノックアウト細胞を樹立してin vitro の実験を行い、それぞれの細胞内機能の解析にも着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度内に全額執行し,全て納品完了している。残額分のみ,支払いが4月になったため次年度使用額が生じた
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年4月に支払い完了済みである
|