研究課題/領域番号 |
26293172
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸澤 宏之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80324630)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝癌 / 遺伝子変異 / AID |
研究実績の概要 |
ヒトの癌の発生には慢性的な炎症の持続が重要な役割を果たしている。他方、癌細胞の発生にはゲノム異常とエピゲノム異常の両者が関与しているものと推定されている。しかしながら、これまで肝癌を含むさまざまなヒト癌組織において多様なゲノム・エピゲノム異常の報告がなされているものの、その生成機序に関しては大部分が不明のままである。申請者らのこれまでの研究により、炎症性サイトカイン刺激により肝細胞に異所性に、遺伝子編集酵素AIDが発現誘導されること、その結果、発癌に関連した遺伝子に変異が生成・蓄積し、肝癌の発生に重要な役割を果たしていること、が明らかになった。そこで、慢性炎症により持続的にAIDを発現した肝細胞に生成・蓄積するゲノム/エピゲノム異常を統合的に解析することにより、ヒト肝癌発生の分子機構を解明することを本研究の目的とした。本年度は、肝細胞に特異的にAIDを持続発現させるため、肝細胞系統の分子マーカーのプロモーター依存性にAIDが発現誘導される遺伝子改変マウスの作成を行った。肝細胞系マーカーとして、EpCAM, アルブミン(ALB)に着目し、それぞれのプロモーター配列下流にCreをknock in したマウス(EpCAM-Cre, ALB-Creマウス)を作成/準備した。これらのマウスと、Cre recombinase作用下にAIDを発現するAIDコンデイショナルトランスジェニックマウス(AID-cTg)を交配させることにより、EpCAM, ALB発現細胞にAIDを発現するEpCAM-AIDマウス、ALB-AIDマウス、をそれぞれ作成した。また、慢性肝障害を背景に発生したヒト肝細胞癌症例の腫瘍部ならびに非腫瘍部の肝組織の全エクソンのゲノム変化を、次世代シーケンサーを用いて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい遺伝子改変マウスの準備・作成については順調に進行している。ヒト臨床検体の解析についても全エクソン解析はほぼ終了している。
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今後の研究の推進方策 |
近年、AIDがTen-eleven translocation (TET)ファミリー分子とともに、能動的な脱メチル化反応を介したエピゲノム制御に中心的な役割を果たしていることが明らかとなってきた。そこで、AIDと協調して脱メチル化反応を担っているTETファミリーとしては、TET1, TET2, TET3の3つの分子が同定されていることから、これらのTETファミリー分子の発現を肝細胞特異的にノックアウトしたTETコンディショナルKOマウスの作成作業を継続する。次に、Cre組換え酵素作用下にそれぞれのTET分子がKOされるfloxed KOマウスと、EpCAM-Cre, ALB-Creマウスを交配させる。最終的に得られた、EpCAM-TET KOマウス、ALB-TET KOマウスの表現型を解析するとともに、肝細胞に生じているメチル化変化とゲノム変化を包括的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
TETファミリー分子の発現を肝細胞特異的にノックアウトしたTETコンディショナルノックアウトマウスの作成はほぼ最終段階まで進んでいるが、作成諸経費の支払い時期が年度末と重複したため次年度に繰り越した。同様に、臨床検体のゲノム解析に要した試薬の一部が国内在庫なく海外からの取り寄せとなったため、支払いが次年度繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画通りの遺伝子改変マウス作成ならびに次世代シーケンサーを用いたゲノム解析に要する諸費用の支払いを次年度に完了する予定である。
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