研究課題
B型、C型肝炎ウイルス(HBV, HCV)の持続感染は本邦における肝硬変・肝癌等の致死的肝疾患の最大の原因である。ウイルスのヒト選択性から、感染関与遺伝子を改変した動物モデル等でのHBVの感染実験は困難であり、HBVウイルス感染の分子機構の解明の障害となっていた。申請者らは、ヒトiPS細胞から肝幹・前駆細胞、そして成熟肝細胞を誘導する培養系を独自に開発している。また最近、ゲノム上の任意の配列を切断できるゲノム編集酵素を用いたヒトiPS細胞等の遺伝子改変法が報告され、申請者らも特定の遺伝子をノックアウトしたヒトiPS細胞由来肝幹・前駆細胞の作製に成功している。本研究では以上の成果をもとに、ウイルス受容体候補遺伝子を破壊したヒトiPS細胞由来肝細胞を作製する。得られた細胞を用いたin vitro、in vivo系の感染実験から、HBVの感染・増幅機構を解明する。前年度までの研究によって、HBVの受容体として知られるNtcpを薬物依存的に誘導できるヒトiPS細胞を作製した。この遺伝子改変iPS細胞からヒト肝前駆細胞または成熟肝細胞を誘導し、HBVを感染させた。この系でHBVの感染や細胞内での増幅を確認しており、ヒトiPS細胞由来細胞を用いたHBV感染系を構築した。しかし、この系の問題点としてヒトiPS細胞由来の肝細胞の分化度が低くHBVの感染や増幅が不十分なことが挙げられた。そこで本年では、肝細胞の機能を向上させる遺伝子のスクリーニングを行った。ヒトiPS細胞から肝細胞系列を誘導し、ラミニンコート上で継代培養を行うことで長期増殖可能な肝前駆細胞を得た。この細胞に遺伝子を発現させ機能解析を行い、肝成熟を促進する因子の同定を進めている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Stem Cells in Clinical Applications “Liver, Lung and Heart Regeneration” (edited by Phuc Van Pham)
巻: 1 ページ: 3-13
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巻: 27 ページ: 215-229
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