研究課題/領域番号 |
26293179
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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研究分担者 |
原 裕一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60550952)
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70550961)
岸 文雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40153077)
池田 正徳 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30315767)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / マイトファジー / 鉄 / ミトコンドリアフェリチン |
研究実績の概要 |
平成28年度は酸化ストレス応答機構の一つとして、ミトコンドリア品質管理機構について研究を行った。ミトコンドリアは細胞内の最大の活性酸素種(ROS)産生器官であり、細胞のアポトーシス制御器官でもある。それ故、ミトコンドリアの品質管理は細胞の恒常性維持に重要である。障害ミトコンドリアはミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)により排除されるが、最近細胞内の鉄欠乏がマイトファジーを誘導することが報告された。そこで細胞内の鉄欠乏がマイトファジーを引き起こす分子機序について解析した。鉄キレート剤、Deferiprone (DFP)を細胞に投与するとミトコンドリア内に2価鉄が減少した。ミトコンドリアの鉄代謝関連分子の発現を調べたところ、鉄減少に伴いミトコンドリアフェリチン(FtMt)の発現上昇(mRNAと蛋白)が確認された。FtMtの転写を制御する転写因子はいくつか知られているが、その中で鉄減少に伴いSP1の発現上昇、核移行とともにFtMt転写活性化領域への結合活性が上昇した。一方、FtMtはオートファジーのcargo receptorであるNuclear Receptor Co-activator 4 (NCOA4)と結合し、FtMtのミトコンドリア誘導配列により、FtMtとNCOA4はミトコンドリアに局在するのが確認された。さらに、オートファジー隔離膜の伸長蛋白であるLC3-IIとも結合していることも確認された。以上の成績は、ミトコンドリア内鉄の減少に伴いFtMt発現が増強し、NCOA4と結合することでマイトファジーを誘導することを示すものであるが、FtMtをノックダウンするとマイトファジーの誘導は抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、酸化ストレス応答シグナルの網羅的解析から肝発癌機構を解析することを目的としていた。実際に平成27年度まではHCVによる肝発癌機能を念頭にHCV感染細胞の酸化ストレス応答シグナルについて解析を行った。酸化ストレス応答の網羅的解析のひとつとして、細胞内リン酸化酵素の活性亢進とそれに伴う細胞内シグナルの変化について解析を行った。この間Direct Acting Antiviral (DAA)の登場により、100%近いHCVの排除が可能になってきた。そこでHCVに起因する酸化ストレス応答から少し方向性を変えて、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)等も含んだより広範な肝細胞内酸化ストレス応答としてのミトコンドリア品質管理機構に焦点を当てて研究を進めている。ミトコンドリアの品質管理機構はミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)によって制御される。これまでマイトファジーはユビキチン結合酵素であるParkinがリン酸化されてミトコンドリアに局在し、ミトコンドリア外膜がユビキチン化されることでオートファジーが進行する分子機序が明らかにされていた。一方、Parkinには依存しない鉄欠乏によるマイトファジー誘導が報告され、鉄代謝からみたあらたなマイトファジー誘導機構が注目された。そこでわれわれは鉄キレート剤によるマイトファジー誘導機構を明らかにすることで、酸化ストレス応答機構からみた肝発癌抑制戦略を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内鉄欠乏によるマイトファジー誘導の分子機構はかなり明らかにしてきたが、マイトファジー誘導に中心的役割を果たすミトコンドリアフェリチンが、鉄欠乏をどのようにして感知して、その発現がupregulateされるかについて今後明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として421,191円を繰り越し予定としている。現在計画しているAtg5ノックアウトマウスとHCVトランスジェニックマウスの交配が予定より遅れたため、この実験の一部費用を繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記に記載したように、Atg5ノックアウトマウスとHCVトランスジェニックマウスの交配による新たな実験を計画しており、この実験の一部費用に繰越金を充てる計画である。
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