研究課題/領域番号 |
26293182
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
柴 祐司 信州大学, 医学部附属病院, 講師(特定雇用) (70613503)
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研究分担者 |
瀬戸 達一郎 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70362118)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 循環器 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究では心筋梗塞後心不全に対するiPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療を実現するために以下の3点について明らかとする。 ・MHC型の一致したドナー/レシピエントにおけるiPS細胞移植後の免疫応答と腫瘍形成 ・霊長類における同種移植モデルによるiPS細胞由来心筋細胞移植後長期の有効性と安全性 ・心筋細胞移植による治療効果のメカニズムの解明 これらの目的のために、H26年度には移植用細胞(MHC型ホモ接合体カニクイザル由来GCaMP陽性iPS細胞)の品質評価を終了し、アクチビンA、BMP-4を用いて、全ての移植実験に必要な2×109の心筋細胞を作製し凍結保存した。この細胞をカニクイザル心筋梗塞モデル(冠動脈結紮モデル)に移植したところ、移植細胞の生着はわずかであった。そこで心筋梗塞を冠動脈結紮ではなく、虚血/再灌流モデルに変更したところ、十分な細胞の生着が確認された。さらに動物モデルとして、心エコー図検査、心臓CT検査について手技を標準化し、安定して施行可能となった。また、GCaMPを用いた蛍光イメージングを行うための、心臓保護液を用いた心臓の摘出と搬送、さらにLangendorff法の手技についても確立した。この方法によってGCaMP陽性心筋細胞を移植したところ、心外膜側から移植心筋細胞の収縮が確認できた。これらの結果から、本試験が予定通り遂行可能であると判断し、平成27年3月よりMHC型がヘテロ接合体であるカニクイザルを用いて実際の移植実験を開始し、現在データを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GCaMP陽性のMHC型ホモ接合体カニクイザルiPS細胞の作製に成功し、さらに移植に必要な心筋細胞の作製、凍結保存が終了した。この細胞は収縮期に蛍光強度が増強し、心筋の収縮の蛍光イメージングが可能となった。イメージングを行う際に、カニクイザルの心臓を摘出し、心筋保護液で心臓を停止させた上で、Tyrodeで再灌流を行うLangendorff法の条件の最適化を行った後、GCaMP陽性心筋細胞をカニクイザル心臓に移植し、心臓を摘出し、Langendorff法で灌流し蛍光イメージングを行ったところ、グラフト心筋細胞の収縮の可視化が可能であった。 さらに、心筋細胞移植後の心機能評価に必要な心エコー、心臓CT検査について実際のカニクイザルを用いて撮影条件を検討し、プロトコールを確立した。心筋梗塞作製後のカニクイザルの心臓CTを撮影したところ、梗塞部位の同定が可能であった。In vitro、ex vivo、in vivo全ての実験のプロトコールが確立したため、平成27年3月より実際にMHC型の一致したカニクイザルを用いて、心筋梗塞作製および心筋細胞移植を開始した。現在データを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には引き続き、MHC型の一致したカニクイザルを用いて、心筋梗塞作製、GCaMP陽性iPS細胞由来心筋細胞移植を行い、心臓CT、心エコーを用いて心機能の評価を行う。また、細胞移植後の安全性評価としてモニター心電図を用いた不整脈頻度について検証する。さらに移植12週間後に、心臓を摘出し心筋保護液で心停止させ、Langendorff法で再灌流を行い、GCaMPイメージングを行うことにより、ホストとグラフト心筋細胞の電気的統合について評価する。またイメージングが終了した心臓を固定し、組織学的検査を行う。CD3およびCD20による拒絶反応の評価やグラフト面積の算出、梗塞後の線維組織の面積を算出する。また、腫瘍形成の有無についても、全ての組織切片について詳細に観察する。平成27年度内にコントロール動物5頭、心筋細胞移植動物5頭について実験を終了させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の納品日が、次年度となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に購入を予定していた物品は4月に納品予定である。平成27年度経費は主に動物実験費用にあてる。細胞培養試薬や遺伝子実験試薬、抗体の購入にもあてる。
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