研究課題
本研究では心筋梗塞後心不全に対するiPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療を実現するために以下の3点について明らかとする。●MHC型の一致したドナー/レシピエントにおけるiPS細胞移植後の免疫応答と腫瘍形成●霊長類における同種移植モデルによるiPS細胞由来心筋細胞移植後長期の有効性と安全性●心筋細胞移植による治療効果のメカニズムの解明これらの目的のために、H27年度には虚血・再灌流モデルによって作製した心筋梗塞カニクイザルに対してiPS細胞由来心筋細胞を移植した。移植12週間後に心臓を回収し組織検査を行ったところ、グラフト心筋細胞の長期生着が確認できた。さらに、CD45およびCD3に対する免疫染色を行ったが、明らかな免疫拒絶反応は認めれらなかった。次に、細胞移植後の心機能を評価するために、従来からの心エコー図検査に加えてマイクロCTによる心機能評価法を確立した。マイクロCTにおける評価では心筋細胞移植動物において、コントロール動物に比べて心機能の改善効果が見られた。次に心機能改善のメカニズムを確認するために、蛍光CaセンサーGCaMPを用いて、グラフト心筋細胞のホスト心臓との電気的結合について調べた。GCaMP遺伝子を未分化iPS細胞に導入し、心筋細胞を作製したところ、この心筋細胞は収縮と一致して蛍光発色することが確認できた。さらにin vivoにおいてGCaMP陽性心筋細胞を移植し、蛍光イメージングを行ったところ、グラフト心筋はホスト心臓と一致して収縮していることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
in vitroにおいて、MHCホモ接合体由来カニクイザルiPS細胞を樹立し、さらに蛍光CaセンサーGCaMPを安定的に発現する心筋細胞の作製に成功した。この細胞を心筋梗塞を発症したMHCヘテロ接合体サルに移植したところ、明らかな免疫拒絶反応はなく長期間生着した。さらに生着したグラフト心筋細胞はホスト心臓と協調して収縮していることが証明できた。また新規にマイクロCTを用いたカニクイザル心機能評価法を確立し、心筋移植動物において心機能改善効果が確認できた。
H28年度には、カニクイザルを用いた移植実験を継続し、全ての実験(N=10)を終了させる。心機能の改善効果についてコントロール動物と比較し、統計解析を行う。心筋細胞移植動物において生着したグラフトの組織学的評価(心筋トロポニンT、アクチニン、CD31、GFPコネキシン43、カドヘリン等)を行う。また、心筋細胞移植の安全性評価として、移植後不整脈の評価をHolter心電図を用いて行う。これらの実験を全て終了させ、論文投稿する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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