研究課題
本研究では、新規アディポサイトカインであるアディポリンの虚血性心疾患をはじめとする心血管疾患における役割を個体レベル、細胞レベルで解明することを目的としている。アディポリン欠損マウスの作成に成功し、アディポリン欠損マウスは対照マウスと比べ、生理的条件下では心血管系および代謝系に明らかな表現型を認めなかった。アディポリン欠損マウスと対照マウスに対して心筋虚血再灌流モデルを作成すると、アディポリン欠損マウスは対照マウスと比較して再灌流後の心筋梗塞巣のサイズが有意に増大しており、心エコーで評価した心収縮能も有意に低下していた。また、アディポリン欠損マウスは対照マウスと比べて虚血心筋における炎症性サイトカインの発現が有意に増加していた。従って、アディポリンは虚血心筋に保護的に作用すると考えられた。培養心筋細胞を用いた解析では、生理的濃度のリコンビナントアディポリン蛋白を心筋細胞に前処理するとLPS添加による炎症性サイトカインの発現増加は濃度依存的に抑制された。また、培養マクロファージにおいてもアディポリン蛋白添加によりLPS刺激による炎症性サイトカインの発現増加が抑制された。内皮細胞においてはアディポリン蛋白添加によりアポトーシス反応が抑制され、増殖反応が促進された。従って、細胞レベルにおいてアディポリンは心血管系細胞に保護的に作用すると考えられた。また、冠動脈疾患患者における血中アディポリン濃度は健常者と比べて有意に低値を示していた。以上より、アディポリンは心血管系に保護的に作用するアディポサイトカインであることが明らかになり、アディポリンは心血管病の病態生理解明や治療法開発に結びつく標的分子となる可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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