研究課題
1. 成体におけるmiR-33aおよび33b個別の役割の解明:a) 栄養状態の変化による脂質恒常性に対する検討;すでに作成済みのmiR-33a欠損マウス、miR-33bノックインマウスを用いて、miR-33aおよびmiR-33bの有無による4種類のマウスの系統を確立した。血中HDL-Cの変化、動脈硬化症、肥満症について検討を続ける。これらマウスの解析によってmiR-33a/b個別の生体での役割が明らかとなる。b)骨髄機能の検討;miR-33欠損マウスにおいてはLy6C high分画の単球が末梢血に出にくいが、骨髄内では末梢血中とは逆にLy6C high monocyteは増加していた。従って、末梢でのLy6C high monocyteの減少は骨髄内の単球の末梢への移送が低下しているためと考えられた。また、骨髄における血球系前駆細胞の解析をフローサイトメトリーにて行い、マイクロRNA-33欠損マウスにおいて造血幹細胞含有分画のLSK細胞および単球・顆粒球系前駆細胞(CMP, GMP)の増加が認められた。骨髄移植を用いて血球系のみマイクロRNA-33の欠損した野生型マウス、および血球系のみ野生型のマイクロRNA-33欠損マウスを作成したところ、骨髄から末梢血への単球輸送の低下は血球系以外の表現型であり、骨髄中での造血幹細胞および単球・顆粒球前駆細胞、単球の増加は血球系の表現型であることが判明した。2.臓器別のmiR-33の役割の解明:miR-33floxマウスが確立できたため、線維芽細胞特異的Creマウスと交配を開始した。このマウスにおいて大動脈縮窄モデルを作成する予定である。心臓の線維化における線維芽細胞のmiR-33の役割が明らかとなる。3.ヒト肝臓サンプルを用いたmiR-33のガイド鎖、パッセンジャー鎖の解析:正常肝臓、NASH肝臓サンプルを収集した。
1: 当初の計画以上に進展している
実験に使用する遺伝子改変動物は予定通りに作成でき、順調に研究は進展している。1. 成体におけるmiR-33aおよび33b個別の役割の解明:a) 栄養状態の変化による脂質恒常性に対する検討においては、高脂肪負荷、高コレステロール負荷、絶食刺激のどの場合においても興味深い表現型が認められており、今後の研究の進展が大変期待される。b)骨髄機能の検討においては、予定の解析がほぼ終了し、今後は造血幹細胞数に影響を与えると思われる遺伝子群をバイオインフォマティクスによって選別し、上記の表現型のレスキュー実験を行う予定である。2.臓器別のmiR-33の役割の解明:miR-33floxマウスと線維芽細胞特異的Creマウスの交配後、大動脈縮窄モデルを作成することで、心臓の線維化における線維芽細胞のmiR-33の役割が明らかとなる。また、肝臓特異的miR-33欠損マウスも作成し、肝細胞でのmiR-33の機能解析を開始する。3.ヒト肝臓サンプルを用いたmiR-33のガイド鎖、パッセンジャー鎖の解析:正常肝臓、NASH肝臓サンプルは十分収集できたため、解析に移る。
これまでに、コレステロール合成の主要な転写因子のSterol regulatory element-binding protein 2 (SREBP-2)遺伝子のイントロン16にあるマイクロRNA(microRNA; miRNA; miR)-33(33a)欠損マウスを作成し、これが細胞内コレステロール維持に宿主遺伝子と協調的に働くことを見出した。さらにmiR-33は骨髄での単球増殖に、また末梢組織では線維化を促すという知見を得ている。すなわち、miR-33はコレステロール維持のための'倹約遺伝子'、'防御・修復因子'として働いてきた可能性があるしかしながら、現代ではこれらの作用は動脈硬化や慢性炎症、線維化につながり、不利な面が多い。。今回の研究計画によって、さらに栄養状態の変化に応答して、臓器特異的にmiR-33a/bが働いてきたことが明かとなりつつある。
基金として計上していた予算が一部残った。
次年度に主に消耗品として使用する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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