研究課題
本申請研究では、不全心において特徴的に認められる遺伝子発現変化に関わる転写・エピジェネティック調節経路の解明を通した慢性心不全の分子病態解明と、それに基づく新規治療標的・戦略の同定・構築をめざし、これまで申請者が明らかにしてきた病的心筋リモデリングに関わる転写調節経路について解析を行う。本年度は具体的に以下のような研究を行った。1), 心筋特異的NRSFコンディショナルノックアウトマウス(CKO)の表現系解析及びその分子機構解明。心筋特異的NRSFノックアウトマウスは生後心機能低下と致死性不整脈を起こし生後10週くらいまでに突然死する。これらマウスと、優性抑制変異型NRSF心筋過剰発現マウス(dnNRSF-Tg)との遺伝子発現を比較検討した結果、GタンパクをコードするGNAO1遺伝子の発現が共に更新していることを見出した。そこで、これらマウスへPTX投与を行ったところ、その心機能を改善させ、生存率を延長させる可能性を見出した。現在GNAO1ノックアウトマウスを入手し、これらマウスにおけるGNAO1の意義を解析中である。また心筋特異的NRSFノックアウトマウスにおける心筋代謝経路の解析についても継続した検討を行っている。2)Rho依存性転写活性化因子MRTF-Aの病的心筋リモデリングにおける意義の解析とそれに基づく新規心不全予防・治療薬開発。MRTF-Aの阻害薬が心不全マウスであるdnNRSF-Tgの心機能を改善させる可能性について確認するための投与実験を継続した。3)新規心不全治療標的としてのTRPC6/3イオンチャネルの意義の解明。 TRPC阻害薬を心不全モデルマウスであるdnNRSF-Tgに投与し、その心機能が改善される結果をプレリミナリーに得、その解析を継続している。またTRPC3/6ダブルノックアウトマウスを入手し、dnNRSF-Tgとの交配を開始した。
2: おおむね順調に進展している
複数の心筋の遺伝子発現調節経路に関してアプローチを継続しており、一部興味深いデータが得られ、解析を進めている。またこれら解析のための複数の遺伝子改変動物の開発、入手に成功し、今後の解析の進行が期待できる。
現在までのところ、当初の予定範囲での研究が進行している。今後さらに複数の遺伝子改変動物モデルを用いた解析を予定しており、これらを精力的に推し進めることにより、さらなる研究の進展を目指したい。
研究初年度のために当初予想よりマウスの生理学的表現型解析が相対的に多く、分子生物学的あるいは生理学的解析に用いる試薬などの購入費が予想より少なかったため。
今年度で得られた表現型解析結果を基に、来年度以降は生化学的、分子生物学的解析が増える見込みであり、これら解析に使用する試薬の購入に使用する予定である。
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