研究課題
平成27年度では、心肥大・心不全病態に関連する標的遺伝子Xの下流シグナルを検討したところ、圧負荷などのストレスによって心筋細胞における標的遺伝子Xの発現がNFATを介して誘導され、その結果、標的遺伝子Xの下流シグナルによって心筋細胞におけるAKTの分解が促進され、その結果SERCA2Aの発現が低下し、カルシウムイオン濃度の調節機能が低下することで、心臓の収縮力低下、病的心肥大の誘導が促進されることが明らかとなった。さらに、野生型マウスに生理的心肥大を生じるような適度な運動負荷圧負荷を与えると、標的遺伝子Xの発現が減少すること、標的遺伝子X KOマウスでは生理的心肥大が生じ、圧負荷による心不全に対して抵抗性を示すことを前年度に見出していたが、本年度において、適度な運動負荷によって心筋細胞における特定のmiRNAの発現が亢進し、これが標的遺伝子Xの発現を抑制すること、標的遺伝子Xの発現抑制によってAKT-SERCA2A経路の活性化およびPGC-1aやPPARa発現亢進によるATP産生促進効果をもたらし、心保護作用を示すことが明らかとなった。また、アデノ随伴ウイルスを用いて心筋細胞における標的遺伝子Xノックダウンを行うことで、圧負荷心不全モデルマウスにおける心機能低下を抑制することに成功した。(特許の関係上、研究対象としている遺伝子名を標的遺伝子Xと標記)
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画とおり心肥大・心不全病態の進展における標的遺伝子Xの機能および適度な運動刺激による生理的心肥大の誘導における標的遺伝子Xの発現抑制機構やその下流シグナルを明らかにできた。さらに、アデノ随伴ウイルスを用いた標的遺伝子Xのノックダウンによって圧負荷心不全モデルマウスにおける心機能低下を抑制することに成功し、新たな心不全病態に対する治療法開発の可能性も見出している。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
さらに詳細に心肥大・心不全病態における標的遺伝子Xの機能を解析するため、心筋細胞特異的な標的遺伝子X KOマウスを用いて圧負荷心肥大・心不全マウスモデルを作製することで、生理的応答としての心臓リモデリングとその変容による心不全の発症に及ぼす影響を、心肥大・心不全病態関連遺伝子の発現解析、心エコーを用いた心機能解析および心臓の線維化の程度などを指標に解析する。さらに、標的遺伝子Xを対象とした心肥大・心不全病態の遺伝子治療の有効性についてもマウスモデルやヒトiPS由来心筋細胞等を用いて更に検証を行う。
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