研究課題/領域番号 |
26293191
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
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研究分担者 |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 講師 (10389570)
加藤 丈司 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (20274780)
桑迫 健二 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 准教授 (20381098)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Big angiotensin-25 / アンジオテンシン / バイオマーカー / 糖鎖ペプチド / 生合成酵素 |
研究実績の概要 |
Big angiotensin-25(略称、Bang-25)はヒト尿中に存在する最も主要なアンジオテンシン関連ペプチドとして、ごく最近研究代表者らにより発見された糖鎖が付加した特徴的な構造をした新規ペプチドである。本ペプチドはキマーゼにより速やかにアンジオテンシII(Ang II)に変換されるが、レニンに対しては抵抗性がある。また、Bang-25は心筋、腎臓糸球体のポドサイトや副腎髄質をはじめ、ヒト生体内に幅広く分布している。そこで本研究では、①Bang-25の生体内での役割や生合成機構を明らかにすることで新たな循環調節機構の存在を明らかにする。②Bang-25の定量法を確立し、循環器疾患患者の血中や尿中Bang-25を検討することを目的として行った。 Bang-25の定量法としてパーキンエルマー社のAmplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay(Alpha)LISA法を確立した。その際にAng IIのN末端に特異的な抗体をビオチン化し、Bang-25のC末端に特異的な抗体をAlpla LISAアクセプタビーズに結合させる方法を利用した。またこの測定系を用いてヒトの尿・血液・組織中のBang-25濃度を測定した結果、尿中のBang-25が血中よりも数十倍多い事が明らかとなった。さらに腎臓疾患患者を含むヒト尿中のBang-25を測定した結果、糸球体濾過量(eGFR)と負の相関が見られたが、尿タンパクとは相関していなかった。つまり、尿中Bang-25は腎疾患における腎障害の程度を反映していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bang-25の定量法についてAlpha LISA法を確立し、尿サンプルの前処理を検討した。また確立したBang-25のAlpha LISA法はAng IのようなBang-25よりも短いアンジオテンシン関連ペプチドのみでなく、アンジオテンシノーゲン(Aogen)といったBang-25よりも長いアンジオテンシンタンパクを認識しなかった。つまりBang-25に特異的な定量法を確立する事ができた。そのため研究目的②のBang-25の定量法の確立を達成できた。また、Bang-25の定量法を使って腎臓疾患患者を含めた尿や血液の検体のBang-25を測定した事で腎障害におけるバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。 以上より本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究目的を達成するために以下に示すように研究をすすめていく。 ①手術時に得られた病的組織を用いてBang-25が組織中でAng IやAng IIに変換されるのかどうかの検討を行う。その際にRA系阻害薬を用いることによって病態におけるBang-25のRA系構成因子としての意義を明らかにするとともにBang-25の変換機構を明らかにする。②ラット、マウスを用いて合成Bang-25の急性投与や慢性投与における血行動態(血圧、心拍数、末梢血管抵抗、尿量等)の変化を観察する。またRA系阻害剤が及ぼす影響を観察する事でBang-25の生理学的・薬理学的作用を検討する。③Bang-25の含有の多い組織はBang-25の生成酵素も多いと考えられるので、Bang-25の多い組織の抽出物を用いて酵素の活性を測定する。④各種疾患(循環器疾患、腎疾患、その他)患者や検診受診者を対象に、Bang-25の血中濃度と尿中濃度の測定を行い、RA系因子をはじめ各種の臨床パラメーターと比較検討する。
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