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2014 年度 実績報告書

肺構築細胞に着目した慢性閉塞性肺疾患の病態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26293195
研究機関東北大学

研究代表者

杉浦 久敏  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20445092)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード肺線維芽細胞 / COPD / オキシステロール / KLF5 / 細胞老化
研究実績の概要

COPDの病態における肺構築細胞の役割を解明するために、本研究では、以下の二つの観点から研究を遂行している。本研究を遂行するにあたり、現在までの、研究実績について以下に示す。
1) 肺構築細胞に着目した気腫化の形成機序の解明
気腫化の形成には、肺構築細胞の老化や機能不全が関与すると考えられている。現在は、肺線維芽細胞の老化についての検討を行っている。我々は、COPD由来の肺線維芽細胞では、気腫化の機序として、細胞老化が進行していることを老化関連蛋白質(p16, p53)の発現を免疫組織学的に検討することで明らかにした。さらに、COPD患者の気道で産生が増加している酸化型コレステロールの27-hydroxycholesterol(27-OHC)の細胞老化に対する役割について検討を行った。COPD患者気道で検出される濃度の27-OHCをヒト肺線維芽細胞に投与すると、老化関連蛋白質の発現増強、老化関連酵素の蓄積、細胞増殖速度の低下を招来し、細胞老化に至ることを明らかにした。これらの細胞では組織修復能が著明に減弱した。27-OHCに対する老化感受性は、健常人よりもCOPDの肺線維芽細胞で鋭敏であり、27-OHCは、COPDの肺構築細胞を老化させることで、COPDの病態に関連することが明らかになった。
2) 肺構築細胞に着目した末梢気道線維性狭窄の形成機序の解明
本研究における検討で、COPD患者から分離培養した気道線維芽細胞は強い線維化能を有することが明らかになった。この線維化能は、Kruppel-like factor 5 (KLF5)によって制御されていることが明らかになった。COPDの末梢気道周囲では、KLF5が極めて強く発現しており、COPDの末梢気道の線維化と関連している可能性が示唆された。同時にKLF5は、筋線維芽細胞への形質転換および蛋白分解酵素の発現を調節していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目標は、肺構築細胞の機能面から見たCOPDの病態形成の解明であり、COPDの重要な病理学的変化である肺実質の気腫化と末梢気道の線維性狭窄の機序を明らかにすることである。気腫化に関しては、正常な肺構造を維持するために重要な構築細胞である肺線維芽細胞がCOPD患者では、細胞老化による組織修復機能不全に陥っており、その原因として、27-OHCが関与している可能性を明らかにした。本研究内容は、すでに英文誌へ投稿中である。また、末梢気道の線維性狭窄に関しては、線維化を制御する転写因子KLF5が過剰発現し、末梢気道の組織改変に重要な役割を担っていることを明らかにした。末梢気道病変に関しては、現在まで、病因が明らかになっておらず、本研究内容は、KLF5を抑制することで、末梢気道病変の進行を抑制する可能性を示すものである。本研究内容も現在、英文誌に投稿準備中である。本年度の成果から、肺および気道線維芽細胞に着目したCOPDの病態の解明については、申請書に記載した成果が達成されたと考える。
一方で、気道上皮細胞や血管内皮細胞といった他の肺構築細胞の役割については、現在、検討中である。現在は、気道上皮細胞における全く新規のレドックス関連分子である活性硫黄種の着目し、その役割を含めて検討を行っているところである。従来より、COPDの最も重要な病因の一つとして気道および肺の酸化ストレスが提唱されている。肺の抗酸化機構としては、SODやカタラーゼなどのスーパーオキサイド消去系やグルタチオンに代表されるヒドロキシラジカル消去系が知られているが、活性硫黄種は極めて強力な還元作用、細胞保護作用を有する分子であり、現在、独自のLC/MS/MS測定系を確立し、その産生様式を含めて検討中である。血管内皮細胞に関しては、新たな細胞傷害マーカーであるエクソソームに着目し、COPD患者血漿や、喀痰を用いて測定中である。

今後の研究の推進方策

肺線維芽細胞の役割については一定の成果が得られており、研究成果を投稿中である。また肺線維芽細胞で得られた知見に関しては、学会や研究会での発表を通じて、公表していく予定である。また、研究に用いる肺構築細胞では、現在、気道上皮細胞を用いた検討を行っている。気道上皮細胞を用いた活性硫黄種の役割の検討についても、現在、順調に研究は進んでいる。一方で、活性硫黄種の測定では、LC/MS/MSの測定精度を向上させるために、Br-bimaneの代わる新たな付加体を検討中である。この測定系については、本学環境保健医学分野の赤池らと協力し、確立を目指す。また、気道上皮細胞の分離培養は、肺線維芽細胞の培養より技術的に困難である。今後は、より多くの肺組織や気道上皮細胞を含む肺構築細胞を得るために、グループの研究員(大学院生を含む)を2名増員し、精力的に検体採取に当たる予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり、平成27年度請求額と併せ、今年度の研究遂行に使用するものである。

次年度使用額の使用計画

平成27年度は気道上皮細胞を用いた活性硫黄種の役割の検討について行っていく予定である。活性硫黄種の測定では、LC/MS/MSの測定精度を向上させるために、Br-bimaneの代わる新たな付加体を検討中であり、また、気道上皮細胞の分離培養は、肺線維芽細胞の培養より技術的に困難であるためより多くの肺組織や気道上皮細胞を含む肺構築細胞を得る必要もあり、多数の検体採取に当たるなどの研究を遂行するために使用する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Reduced level of physical activity in Japanese patients with chronic obstructive pulmonary disease.2014

    • 著者名/発表者名
      Minakata Y, Sugino A, Kanda M, Ichikawa T, Akamatsu K, Koarai A, Hirano T, Nakanishi M, Sugiura H, Matsunaga K, Ichinose M.
    • 雑誌名

      Respir Investig

      巻: 52 ページ: 41-48

    • DOI

      10.1016/j.resinv.2013.06.002.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Sphingosylphosphorylcholine induces α-smooth muscle actin expression in human lung fibroblasts and fibroblasts mediated gel contraction via S1P2 receptor and Rho/Rho-kinase pathway.2014

    • 著者名/発表者名
      Wang XQ, Mao LJ, Fang QH, Kobayashi T, Kim HJ, Sugiura H, Kawasaki S, Togo S, Kamio K, Liu X, Rennard SI.
    • 雑誌名

      Prostaglandins Other Lipid Mediat

      巻: 108 ページ: 23-30

    • DOI

      10.1016/j.prostaglandins.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Matrix metalloproteinase-9 activates TGF-β and stimulates fibroblast contraction of collagen gels.2014

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi T, Kim H, Liu X, Sugiura H, Kohyama T, Fang Q, Wen FQ, Abe S, Wang X, Atkinson JJ, Shipley JM, Senior RM, Rennard SI.
    • 雑誌名

      Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.

      巻: 306 ページ: L1006-1015

    • DOI

      10.1152/ajplung.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] TLR3 activation augments matrix metalloproteinase production through reactive nitrogen species generation in human lung fibroblasts.2014

    • 著者名/発表者名
      Ichikawa T, Sugiura H, Koarai A, Minakata Y, Kikuchi T, Morishita Y, Oka A, Kanai K, Kawabata H, Hiramatsu M, Akamatsu K, Hirano T, Nakanishi M, Matsunaga K, Yamamoto N, Ichinose M.
    • 雑誌名

      J Immunol

      巻: 192 ページ: 4977-4988

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1302919.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Human marrow stromal cells downsize the stem cell fraction of lung cancers by fibroblast growth factor 10.2014

    • 著者名/発表者名
      Kanehira M, Kikuchi T, Santoso A, Tode N, Hirano T, Ohkouchi S, Tamada T, Sugiura H, Harigae H, Ichinose M.
    • 雑誌名

      Mol Cell Biol

      巻: 34 ページ: 2848-2856

    • DOI

      10.1128/MCB.00871-13.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Japanese Society of Allergology. Japanese guideline for adult asthma 2014.2014

    • 著者名/発表者名
      Ohta K, Ichinose M, Nagase H, Yamaguchi M, Sugiura H, Tohda Y, Yamauchi K, Adachi M, Akiyama K.
    • 雑誌名

      Allergol Int

      巻: 63 ページ: 293-333

    • DOI

      10.2332/allergolint.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Bedside Teaching FeNO測定の意義と臨床2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 雑誌名

      呼吸と循環

      巻: 62 ページ: 67-74

  • [雑誌論文] 【COPD 著しく進歩したこれからの実地診療の実際】 COPDとはどんな病気か? 新しいCOPDガイドライン(2013)より 実地医家の具体的な治療と管理実践指針2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏、一ノ瀬正和
    • 雑誌名

      Medical Practice

      巻: 31 ページ: 536-544

  • [雑誌論文] 呼吸器 NO測定2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏、一ノ瀬正和
    • 雑誌名

      臨床病理レビュー

      巻: 151 ページ: 68-76

  • [雑誌論文] 高齢者喘息とCOPDの類似点・相違点 疫学の観点から2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 雑誌名

      アレルギーの臨床

      巻: 34 ページ: 902-903

  • [雑誌論文] COPDにおける気管支拡張薬の選択2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 雑誌名

      Modern Physician

      巻: 34 ページ: 976

  • [雑誌論文] 喘息のバイオマーカー2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 雑誌名

      Airway

      巻: 3 ページ: 2-3

  • [雑誌論文] 呼吸器領域における臨床試験の立案から報告まで- COPD2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏、一ノ瀬正和
    • 雑誌名

      日本胸部臨床

      巻: 73 ページ: 1165-1176

  • [学会発表] 気道の酸化ストレス評価2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 学会等名
      第25回日本アレルギー学会総会春季臨床大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      2014-05-09 – 2014-05-09
    • 招待講演
  • [学会発表] 活性酸素と呼吸器疾患 COPD・気管支喘息と活性酸素2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 学会等名
      第54回日本呼吸器学会総会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪府)
    • 年月日
      2014-04-26 – 2014-04-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 慢性安定期のCOPD治療、今後の展開 LABA2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 学会等名
      第54回日本呼吸器学会総会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪府)
    • 年月日
      2014-04-25 – 2014-04-25
    • 招待講演
  • [図書] イラストでわかる呼吸器内科学2014

    • 著者名/発表者名
      杉浦久敏
    • 総ページ数
      159
    • 出版者
      文光堂

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公開日: 2016-06-01  

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