研究課題/領域番号 |
26293196
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
各務 博 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30418686)
|
研究分担者 |
矢野 聖二 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30294672)
梅津 哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (50251799)
土田 正則 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60293221)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 癌幹細胞 / EGFR遺伝子変異陽性肺癌 / DDX3X |
研究実績の概要 |
DEAD/H (Asp-Glu-Ala-Asp/His) box polypeptide 3, X-linked (DDX3X)が肺癌癌幹細胞化のkey playerであることを明らかとし、これを標的分子とした画期的な癌幹細胞化阻止療法を開発する、ことを目的として平成26年度より本研究を行っている。 平成26年度の研究に於いて、DDX3Xが、①癌幹細胞化を誘導すること、②EGFR系からβ-catenin系へのシグナルスイッチを引き起こすこと、③EGFRシグナル依存性喪失による高いEGFR-TKI耐性を誘導すること、を国際誌に報告した[1]。また、これに先立ちPCT特許出願を行った[2]。 肺癌患者の免疫組織化学によるDDX3X発現解析を行い、1. EGFR遺伝子変異陽性肺癌患者の治療前に出現していないDDX3XがEGFR-TKI耐性化後に高発現していること、2. 治療前にDDX3Xを発現している肺癌では、EGFR-TKI奏効率が13%台と極めて低いことを見出した。この結果は、論文投稿中である。 1. Nozaki K, Kagamu H, Shoji S et al. DDX3X induces primary EGFR-TKI resistance based on intratumor heterogeneity in lung cancer cells harboring EGFR-activating mutations. PLoS One 2014; 9: e111019. 2. 発明の名称:癌幹細胞に発現する分子をターゲットとした癌を診断、治療する方法、出願人:新潟大学、大塚製薬(株)、発明者:各務博、成田一衛、林隆史、後藤義博
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内に明らかにすることとして、1. DDX3X RNA helicase inhibitorの治療効果を明らかにすること、2. 臨床検体においてEGFR遺伝子変異陽性肺癌のEGFR-TKI 耐性にDDX3X発現およびこれによる癌幹細胞化が重要であることを明らかにすること、3. DDX3X遺伝子発現マウスを作成することによりDDX3X RNA helicase治療モデルを確立すること、4. RNA helicase inhibitorを用いた臨床試験を立案すること、の4つを掲げた。 研究初年度である平成26年度において、#1のDDX3X RNA helicase inhibitorの治療メカニズムの基礎となるDDX3Xによるシグナルスイッチ現象、癌幹細胞化、EMT促進のメカニズムをin vitroで明らかとし、論文として発表することができた。RNA helicase inhibitor以外にβcatenin inhibitorが癌幹細胞に対する抗腫瘍活性を有することが明らかにできており、in vivoでの治療実験をすでに始めている。#2についても有望な結果が得られつつある。 以上より、最終的な目的である#4の臨床試験を立案するために必要な基礎データ、臨床データの蓄積がなされており、当初の予定通り進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
1.平成26年度中にDDX3Xが制御しているmiRNAを明らかにすることとしていた。これについては、miRNA arrayにより4つの候補miRNAを見出した。今後、見出した4つのmiRNAの制御について、DDX3X強制発現細胞株、DDX3X knockdown細胞株、DDX3X RNA helicase inhibitorなどを使用して、DDX3Xによる制御メカニズムの詳細を解析する。 2.生化学的解析が順調に進捗しない場合を想定して、併行して行っていた臨床検体を用いたDDX3X発現とEGFR-TKI治療効果については、順調に興味深い結果が得られており、更に症例数を増やしβcatenin, phosphorylated EGFRなどの免疫組織化学的検討も加える。 3.βcatenin inhibitor、DDX3X RNA helicase inhibitorとEGFR-TKI併用によるDDX3X高発現治療耐性肺癌細胞への治療効果については、すでにin vitroでの併用効果を確認している。今後in vivoでの治療モデルにおいて効果の確認を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者土田正則氏が行う予定となっていた手術肺癌臨床検体取得症例が当初予測よりも少なかったため、これに必要として配分していた助成金を未使用として次年度繰り越すこととしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
臨床検体の免疫組織化学解析においてDDX3Xのみならず、β-catenin、EGFR、pEGFR、E-cadherinなどを検討すること、症例数をさらに増やすことを予定しており、現在進行中である。この検討に必要な抗体購入に昨年度未使用分と今年度使用予定分を充当する予定である。
|