研究課題/領域番号 |
26293200
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
河野 隆志 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80280783)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 癌 / 遺伝学 / ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究では、肺腺がんの体細胞変化と胚細胞変化(遺伝子多型)の情報を組み合わせることにより、いまだ解明されていない肺腺発がんドライバー変異であるがん遺伝子融合やそれを有する肺腺がんの発生機構を明らかにすることを目的としている。以下三つのテーマからなる。
A) 融合陽性例、陰性例、非がん対照群について、血液等非がん組織DNAから抽出したDNAを用いて、肺腺がん感受性遺伝子座の多型アレル分布を比較し、危険アレル数の蓄積が融合陽性がんのリスクとなるかを全ゲノムレベルで比較を行った。しかしながら、既知の肺がん感受性遺伝子座やTP53などDNA切断修復やチェックポイントに関わる遺伝子座の関連が融合陽性例で特異的に強いという傾向は見られなかった。一方、EGFR変異がんでは、特異的な感受性遺伝子座が見られた。ただし、例数の差である可能性もあり、さらに検討を続ける。 B) 融合陽性例では、Cancer-census遺伝子の異常が少なく、遺伝子融合を主体として発がんに至る結果を得て、学術論文として発表を行った。これに合致して、融合陽性例特異的な遺伝子異常は見られないという結論を得た。 C) ALK, RET, ROS1の遺伝子座には、数-Kbの切断ホットスポットが存在すること、また、遺伝子融合をもたらす切断DNAの再結合には、非相同末端再結合とsynthesis-dependent end-joiningという二つの切断DNA修復機構が関与していることを見出した。また、CRISPR法を用いて、実際のがん試料で同定された遺伝子融合ゲノム切断点で人工的なDNA切断を生じさせ、ヒト細胞内での融合を発生させる実験系の構築に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テーマがA-Cと3つ存在するうち、テーマBについては研究を終了した。よって、思ったよりも研究は早く進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
上記テーマ3つのうち、Bについては研究が終了したので、A,Cに重点化して研究を行う。 Aについては、肺腺がん全ゲノム関連解析で得られた感受性座について検討を行い、融合陽性肺腺がんの感受性における遺伝要因の関与を明らかにする。 Cについては、実際のがん試料で同定された遺伝子融合ゲノム切断点で人工的なDNA切断を生じさせ、ヒト細胞内での非相同末端再結合による融合発生を再現する実験系を構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
テーマAにおいて、HLA遺伝子座の遺伝子タイピングの必要が生じた。また、テーマ C)において、CRISPR法を用いたヒト細胞内での融合を発生させる実験系の構築に着手し、融合陽性と思われる細胞が得られている。これらの細胞で、融合陽性の細胞がクローナルセレクションされ、さらに融合が細胞生存のためのKey signalを発現していることを確認する必要がる。このためには、シグナル遮断をもたらす薬剤や細胞増殖アッセイキット、さらに、コラーゲンコートの培養器具を多く必要とする。そのため、H28年度の使用額を設定した。
|
次年度使用額の使用計画 |
テーマAにおいて、HLA遺伝子座の遺伝子タイピングを行う。 テーマ C)において、CRISPR法を用いて得られた融合陽性細胞が得られている。これらの細胞でを増殖し、シグナル遮断をもたらす薬剤への感受性をコラーゲンコート培養器具等を用いて行う。
|