研究課題
本研究では、肺腺がんの体細胞変化と胚細胞変化(遺伝子多型)の情報を組み合わせることにより、いまだ解明されていない肺腺発がんドライバー変異であるがん遺伝子融合やそれを有する肺腺がんの発生機構を明らかにすることを目的とした。具体的には、①RET,ALK,ROS1遺伝子融合と感受性多型危険アレル保持状態との関連、②他のCancer Census遺伝子群の体細胞変異との関連、③遺伝子融合のゲノム切断点・結合部位の特徴からのゲノム不安定化機序の理解を通じて、発生機序の解明を行うものであった。①に関しては、融合陽性例、陰性例、非がん対照群について、多型アレル分布を比較したが、既知の肺がん感受性遺伝子座やTP53などDNA切断修復やチェックポイントに関わる遺伝子座の関連が融合陽性例で特異的に強いという傾向は見られなかった。一方、EGFR変異がんでは、特異的な感受性遺伝子座が見られた。②に関しては、平成27年度に終了している。すなわち、融合陽性例では、Cancer-census遺伝子の異常が少なく、遺伝子融合を主体として発がんに至る結果を得て、学術論文として発表を行った。これに合致して、融合陽性例特異的な遺伝子異常は見られないという結論を得た。③に関しては、遺伝子融合をもたらす切断DNAの再結合には、非相同末端再結合が主要な経路として関与していることを患者試料のゲノム解析で見出した。CRISPR法を用いて、実際のがん試料で同定された遺伝子融合ゲノム切断点で人工的なDNA切断を生じさせ、ヒト細胞内での融合を発生させる実験系を構築した。その切断点には、非相同末端再結合の痕跡が見られた。よって、融合の発生を分子レベルで証明できたといえる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
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