研究課題
本研究は、IgA腎症患者から摘出された口蓋扁桃のメタゲノム、腎生検標本のマイクロプロテオミクス解析の両者から抗原を同定し、さらにホストゲノムのエクソーム解析の結果も合わせて、本症の口蓋扁桃粘膜免疫の機能的な異常を解析し、その原因を明らかにすることを目的としている。同定された抗原および糖鎖不全IgA1に対する糸球体細胞の反応と相互作用を細胞・個体生物学的に解析する。また糖鎖不全IgA1沈着後に糸球体炎症が進行する機序を明らかにする。口蓋扁桃で糖鎖不全IgA1が産生される本質的な機序は未解明である。したがって、わが国で広く行われている口蓋扁桃摘出術の臨床的な有効性をRCTで証明するとともに、その有効性を説明するメカニズム自体を明らかにすることが必要である。私共は、IgA腎症の大規模な国際共同ゲノム研究の結果を報告した(J Hum Genet 2015, Nature Genet 2014, PLoS Genet 2012他)。本症の疾患感受性アレルは免疫ネットワークに関連しており、世界各地域の細菌種の多様性とも関連することが分かった。一方、口蓋扁桃の異常が本症発症において重要な役割を果たすことは、臨床的事実からも明らかで (Kidney Int 2003他)、扁桃摘出と副腎皮質ステロイドパルス療法を早期に行うと、高率に寛解が得られる。現在まで46例のIgA腎症を含む合計92例の患者から摘出した口蓋扁桃をメタゲノム解析で検討した。従来の培養法による最近同定では検出されていない、非常に多様な細菌属が同定できた。しかし今のところ、本症に特異的な細菌属レベルでは疾患特異的な細菌は同定されていない。
2: おおむね順調に進展している
孤発例のゲノムワイド関連解析の国際共同研究では10個の遺伝子、15カ所の一塩基置換が疾患感受性遺伝子として同定され、本症の発症頻度の民族差や、炎症性腸疾患や自己免疫疾患との関連を理解する上で、有用な成果が得られた。また、46例の腎生検で確定診断されたIgA 腎症患者、および21例の習慣性扁桃炎、26例の小児扁桃肥大から摘出された口蓋扁桃を収集し、細菌特異的な16SrRNAを解析した。
さらに症例を追加してメタゲノム解析を続行し、また個別の細菌の全ゲノム解析も行う。また、細菌種と糖鎖不全IgAレベルや、治療反応性との関連を解析する。腎生検標本および尿のプロテオミクス解析も行い、特定の細菌種やゲノム多型との関連を検討する。家族性IgA腎症家系のエクソーム解析を行い、それらで同定された感受性候補遺伝子について、孤発例での検討を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
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