研究課題/領域番号 |
26293204
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宮本 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (70174208)
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研究分担者 |
瀬川 博子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (70325257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / リン代謝 / FGF23 / 唾液 / 脳室 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病 (CKD)の進行や透析患者の生命予後においてリンコントロールは非常に重要な役割を演じている。近年、リン酸(以下リン)代謝調節系を支配する中核的なホルモンとして副甲状腺ホルモンに加えて、繊維芽細胞様増殖因子 FGF23 /klotho 系が明らかにされ、骨と腎臓を結ぶリン調節系の重要性が示唆された。しかしながら、なぜ、早期 CKD において、 FGF23 の上昇を介したリン蓄積異常が開始されるかについては、全く解明されていない。本研究では、腎臓、腸管および骨のリン代謝を制御している唾液腺および脳室に焦点をあて、想定されるリンセンサーXPR1 ,AKP3, NaPi-IIbの機能解明、唾液腺リン濃度制御機能、および脳室リン濃度制御と CKD における、その破綻の機序について、その分子機構を解明した。平成26年度において、 XPR1の役割を脈絡層で詳細に検討した結果、リンセンサーよりもリン排泄に関与しているデータが得られた。さらに、全身性リン負荷により、脳室内リン濃度の上昇よりも先に、唾液腺リン濃度が上昇するために、唾液腺におけるリン濃度の上昇を感知する機構が存在する。そこで、平成27年度は、食餌性リン負荷モデル、遺伝性低リンモデル、急性腎臓病 (AKI),慢性腎臓病モデル、および静脈内リン投与モデルを、用いて、唾液中リン濃度の制御機序を検討した。その結果、リン負荷により、唾液腺リン濃度、 NaPi-IIbおよびXPR1の変化よりも先に、腸管アルカリフォスファターゼ AKP3の変動が観察された。また、AKP3-KOマウスを用いて、全身性リン負荷により体内リン代謝を解析した結果、AKP3-NaPi-IIb-XPR1というリン代謝制御系の存在が、唾液腺、腸管、脳室の順番に存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎臓病 (CKD)の進行や透析患者の生命予後においてリンコントロールは非常に重要な役割を演じている。近年、リン酸(以下リン)代謝調節系を支配する中核的なホルモンとして副甲状腺ホルモンに加えて、繊維芽細胞様増殖因子 FGF23 /klotho 系が明らかにされ、骨と腎臓を結ぶリン調節系の重要性が示唆された。しかしながら、なぜ、早期 CKD において、 FGF23 の上昇を介したリン蓄積異常が開始されるかについては、全く解明されていない。本研究計画では、腎臓、腸管および骨のリン代謝を制御している唾液腺および脳室に焦点をあて、想定されるリンセンサーXPR1 ,AKP3, NaPi-IIbの機能解明、唾液腺リン濃度制御機能、および脳室リン濃度制御と CKD における、その破綻の機序についてその分子機構を検討した。平成27年度は、当初の計画に従い、唾液のリン感受機能の存在や、 XPR1, AKP-3, NaPi-IIbに焦点をあて、各種、リン負荷モデルを用いて、唾液リン濃度の応答を検討した。その結果、やはり、脳室よりも唾液リン濃度の非常に迅速な応答が観察された。その機序を検討し、 Duct cellにおけるリン感受機構の存在を明らかにした。これらには、腎臓、腸管および骨のリン代謝と相互作用している唾液腺の重要性を示すものであり、研究計画は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
CKD に伴う唾液線および脳室リン代謝異常の解析について: NaPi-IIbおよび AKP3遺伝子欠損マウスを用いて、唾液腺と唾液中リン濃度を、食事中で各種リン濃度を変化させた合成食を摂取後の、脳内室内、および唾液中のリン濃度の変化をモニターする。また、 CKDモデルマウスと NaPi-IIbおよび AKP3-KOマウスと交配させることで、 ダブル KOマウスを作製して、 CKDの進行における早期リン代謝異常における唾液腺および脳室での、各分子の変化および、その表現型を解析する。さらに、AKP3-KOマウスを用いて、全身性リン負荷により体内リン代謝を解析する。次に、XPR1 の生理学的な役割を明らかにする為、破骨細胞モデルに、 RANLKでの誘導後、破骨細胞分化により、誘導される条件下で、リン排泄機能およびリン輸送との関係を解明する。続いて、脳脈絡層におけるXPR1のリン排泄機序を詳細に検討する。 唾液及び脳室内リン濃度の上昇は、何らかの液性因子の放出を促し、骨細胞からの FGF23 および腎臓リン排泄亢進を引き起こすものと、予想される。そこで、唾液腺における遺伝子発現プロファイルおよびメタボローム解析により、分泌性蛋白遺伝子を中心とした液性因子の検索を行なう。また、唾液のリン感受機構に注目して、 Duct cellに発現する各種リン応答因子を解析する。また、マウス脈絡叢シグナルシークエンストランプライブラリーを用いて、分泌シグナルを有する蛋白質をスクリーニングする。以上の研究により、唾液腺および脳室に焦点をあて、想定されるリンセンサーXPR1 ,AKP3, NaPi-IIbの機能解明、唾液腺リン濃度制御機能、および脳室リン濃度制御と CKD における、その破綻の機序について、その分子機構を解明する。
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