研究課題/領域番号 |
26293207
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
足立 弘明 産業医科大学, 医学部, 教授 (40432257)
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研究分担者 |
岡田 和将 産業医科大学, 医学部, 講師 (30341499)
岩中 行己男 産業医科大学, 医学部, 助教 (60590461)
橋本 智代 産業医科大学, 医学部, 助教 (70425685)
黄 哲 産業医科大学, 医学部, 助教 (30745112)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / オートファジー / 分子シャペロン / ユビキチンープロテアソーム系 / TFEB / HIKESHI / ポリグルタミン病 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
転写因子であるTFEBは、LC3-Ⅱの発現を上昇させてautophagosomeの形成を促進させ、リソソーム内の多くのproteaseの発現も上昇させて、オートファジー機能を全体的に活性化させるマスターレギュレーターである。ヒト神経培養細胞モデルでは、TFEBの高発現によって変異したアンドロゲン受容体(AR)、 ataxin-1、ataxin-3及びHuntingtin蛋白質の発現量の減少効果を見いだし、減少効果のメカニズムを探るために、それらの分子の分解課程におけるオートファジーのアダプター蛋白質であるp62、optineurinとの相互作用について検討したところ、これらのアダプター蛋白質とは相互作用のないことが判明した。さらに、別なアダプター蛋白質との相互作用を、それぞれの病因蛋白質について探索して、より有効で副作用の少ない治療法を探索する。一方、驚いたことにTFEB とHIKESHIの間に相互作用があることを見い出し、両者の共発現によって、変異ARや変異ataxin-1の減少効果が増強されることを見い出した。ヒト神経培養細胞モデルでHIKESHIを単独で様々な量で高発現させると、変異したAR、 ataxin-1蛋白の発現量が減少することも判明している。逆に、CRISPR-Cas9システムを用いてHIKESHIのノックアウト細胞を作成したところ、このノックアウト細胞では、変異ARや変異ataxin-1の発現量が上昇することを見いだしており、HIKESHIの変異した病因蛋白質に対する治療的な作用を明らかにしている。既に作製しているprionプロモーターの調節下でTFEBを高発現するマウスでは、神経系や一般臓器でTFEBが高発現してオートファジーが活性化していることを確認している。また、HIKISHIを高発現するマウスモデルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子であるTFEBは、LC3-Ⅱの発現を上昇させてautophagosomeの形成を促進させ、リソソーム内の多くのproteaseの発現も上昇させて、オートファジー機能を全体的に活性化させるマスターレギュレーターであるが、発現量が過度になると却って毒性を発揮することを見いだし、当初予定していたchicken β-actinプロモーターを使用するとマウスでは致死的な発現量や発現分布となることが判明した。そこで、プロモーターをprionプロモーターに変更したところ、交配可能なTFEB高発現マウスを作製することに成功した。TFEB高発現マウスの作製の試みは世界各地で検討されているが、なかなか成功していなかった。ヒト神経培養細胞モデルでの、TFEBの高発現による各種変異蛋白質の発現量の減少効果とオートファジーの各種アダプター蛋白質との相互作用についても次第に明らかになっている。一方、TFEB とHIKESHIの間に相互作用があることも見い出し、新たな知見と考えられる。HIKESHIの発現量の変化によって、変異したAR、 ataxin-1蛋白の発現量が変化することも明らかにしている。さらに、HIKISHI高発現の治療効果を検討するために、chicken β-actinプロモーターの調節下でHIKISHIを高発現するマウスモデルも作成した。
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今後の研究の推進方策 |
TFEBの各種変異蛋白質の発現量に対する効果に関しては、siRNAなどの核酸解析法を用いてTFEBの発現量を低下させて、AR、 ataxin-1などの蛋白質の発現量に及ぼす影響をウエスタンブロット法などで検討する。さらに、オートファジーのアダプター蛋白質との相互作用も、それぞれの病因蛋白質について探索して、より有効で副作用の少ない治療法を探索する。 既に作製しているchicken β-actinプロモーターの調節下でTFEBを高発現するマウスと球脊髄性筋萎縮症(SBMA)モデルマウスとの交配実験に関しては、さらに解析を進めていく。 HIKISHI高発現の治療効果を検討するために、chicken β-actinプロモーターの調節下でHIKISHIを高発現するマウスモデルを作製した。このマウスを用いて、SBMAモデルマウスの運動機能におけるHIKISHI高発現の効果を解析する。さらに、免疫組織化学などの病理学的検索、ウエスタンブロットなどを用いた蛋白質発現解析および電子顕微鏡による凝集体の形態観察などにより分子生物学的に検討する。異常アンドロゲン受容体に対するleuprorelinによる病態抑止療法は、SBMAのトランスジェニックモデルマウスにおいて高い病態抑止効果を得たため、大規模プラセボ対照二重盲検試験が行われ、発症早期の患者の治療に成功した。病態が進行した状態での機能の改善というニーズに応えられる十分な治療効果を得るには、さらに抗アンドロゲン療法と併用する治療の開発が必要と考えられる。そこで、HIKISHI高発現による対症療法の開発も目指し、進行期のSBMAトランスジェニックマウスに去勢術を施行し、HIKISHI高発現群と野生型群に分けて表現型を解析して、HIKISHI高発現群に野生型群に比し有意な改善効果があるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ、計画通りに使用したが、試薬が予定より安価に購入できたため、僅かに2946円のみ次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として使用する予定である。
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