研究課題/領域番号 |
26293208
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山中 宏二 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80446533)
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研究分担者 |
小峯 起 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (00456211)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
本研究では、アストロサイトの分子病態の解明と治療標的の同定を目指して、申請者が既に同定したTGF-β経路を標的とした候補分子アプローチとALS病因遺伝子の発現をアストロサイト特異的に制御できるマウスを用いた網羅的解析により遺伝性・孤発性ALSの双方の病態に関わる鍵分子を同定し、アストロサイトを標的としたALSの治療法開発を目指す。今年度は、以下の研究成果を得た。 変異SOD1G93Aマウス脊髄でTGF-β1 mRNAの発現が上昇し、ALS患者由来の脊髄アストロサイトにおけるTGF-βタンパク質の発現が上昇することを見いだした。また、アストロサイト特異的にTGF-β1を過剰発現するALSマウス(SOD1G93A/TGF-β1マウス)では、SOD1G93Aマウスと比べて、その疾患進行が加速して平均寿命が短縮すること、SOD1G93Aマウスの内在性TGF-β1の遺伝子発現量は、生存期間と逆相関していることを見いだした。さらに、SOD1G93A、SOD1G93A/TGF-β1マウス由来のグリア混合初代培養細胞と末梢血単核細胞の共培養系を用いた実験で、SOD1G93A/TGF-β1マウス由来のグリア環境では、末梢血由来のリンパ球が減少し、グリア細胞が産生する神経栄養因子IGF-1の発現が低下した。従って、TGF-β1は、グリア細胞とTリンパ球による神経保護環境を抑制することでALSマウスの進行を加速することが考えられた。これらの知見をふまえた実験的治療として、TGF-βシグナル阻害剤の投与を発症後のSOD1G93Aマウスに投与するとその生存期間が延長することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、既に同定しているアストロサイト由来の分子を標的とした実験的治療を開始したが、動物飼育室の移転により実験が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物、研究環境の整備につとめ、効率よく研究をすすめるように配慮したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物飼育施設の改修のため、動物飼育スペースに制約が発生し、十分な個体数が得られなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、改修が終了する予定であるため、実験動物について十分な個体数を確保し効率よく研究をすすめる予定である。次年度使用額は、動物飼育経費や付随する実験消耗品費用に充当する予定である。
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