研究課題
本研究では、アストロサイトの分子病態の解明と治療標的の同定を目指して、遺伝性・孤発性ALSの双方の病態に関わる鍵分子を同定し、アストロサイトを標的としたALSの治療法開発を目指す。今年度は、特にALSモデルマウスを用いて活性化アストロサイトの除去に関わる自然免疫分子の新たな役割を見いだした。自然免疫反応のセンサーであるToll様受容体の機能の鍵となる分子、MyD88及びTRIFを欠損したALSマウスを作成し、解析したところ、TRIFを欠損した場合にのみALSマウスの生存期間が著しく短縮した (平均生存期間 SOD1G93A: 156.6 日,SOD1G93A/TRIF-KO: 138.4日)。TRIF欠損のALSマウスでは、脊髄に浸潤するCD8陽性Tリンパ球、NK細胞などの免疫細胞が著減していた。抗体投与によりSOD1-G93Aマウスからこれらの免疫細胞を除去したが、これらの免疫細胞の病態への関与はみられなかった。一方、TRIF経路が正常な場合、アポトーシスにより異常アストロサイトが除去されたが、TRIF欠損マウスでは、アポトーシスの誘導と異常アストロサイトの除去が不十分であった。また、病巣に蓄積したアストロサイトは、大型の細胞体を呈し、Mac2陽性であり、活性酸素の産生に関わるNox2の上昇とタンパク質分解異常を示唆するp62の蓄積を認め、その機能異常と運動神経への毒性発揮が強く示唆された。さらに、ALSマウスでは脊髄病巣における異常アストロサイトの細胞数と生存期間に負の相関が見られた。以上の結果から、ALSにおける自然免疫反応の関与と、病巣で異常に活性化したアストロサイトを細胞死(アポトーシス)によって除去する自然免疫分子TRIFの新たな機能を明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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DOI:10.1038/s41418-018-0098-3
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http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/byoutai_shinkei.html
http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/mnd/index.html