研究課題
研究代表者らは、体重の調節機構に求心路・遠心路双方からなる臓器間神経ネットワークが重要な役割を果たしていることを明らかにし、肥満が単に過食と運動不足のみによって生じるものではないことを示してきた(Cell Metab 2006, Science 2006, Cell Metab 2012)。これらの研究成果は、臓器間相互作用における経路としての神経ネットワークの重要性を先駆的に明らかにしたものであるが、未だ、神経シグナルの引き金である分子は未解明である。そこで、本研究ではこの臓器間神経ネットワークを司る分子メカニズムの解明を目的として、本年度はトランスクリプトームレベルでの解析を行った。まず、DNAマイクロアレイ法を用い、LacZ遺伝子を肝臓に導入したマウス(=コントロールマウス)と比較して、GKマウス、PPARγマウス、ERKマウスの肝臓での遺伝子発現変化を網羅的に解析し、比較検討した。これによりポジティブフィードバック機構(肝グルコキナーゼ)あるいはネガティブフィードバック機構(肝PPARγ)の神経シグナルの発信源となりうる分子を絞り込んだ。次に、DNAマイクロアレイ法を用い、コントロールマウスと比較してGKマウス、PPARγマウス、ERKマウスの迷走神経の節神経節(迷走神経求心路のニューロンの細胞体が存在する)における遺伝子発現変化を網羅的に解析し、受容体の側からも候補分子の絞り込みを行った。これら二つの検討により、複数の候補遺伝子の絞込みを行った。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ予定通り、トランスクリプトームレベルでの候補分子の絞込みが行えた。
第一に、平成26年度にトランスクリプトームレベルでの解析で絞り込んだ候補分子について、アデノウイルスベクターを用いて肝臓に発現させることで、下記のように個体および各組織に生じる代謝状態の変化を検討する。*アデノウイルスベクターを用いて候補分子を肝臓に導入されたマウスにおいて、(1)体重、摂食量、酸素消費量および自発運動量といったエネルギー収支バランスを検討する。(2)ノルエピネフリン投与により褐色脂肪組織依存性の酸素消費量増加の程度を検討する。(3)血糖、インスリン値、レプチン値や遊離脂肪酸値、中性脂肪値など、エネルギー代謝調節に影響を及ぼし得る種々の血清パラメーターを検討する。(4)褐色・白色脂肪組織や筋肉組織など各組織を組織学的に検討し、肝臓への遺伝子導入が他臓器に与える影響を検討する。また各組織からmRNAを精製し、定量的RT-PCR法を用いて、一組織での遺伝子導入により、他の各組織における遺伝子発現の変化に与える影響を検討する。褐色脂肪組織については、熱産生関連分子(UCP1、PGC-1αなど)の検討を重点的に行う。第二に、肝臓にグルコキナーゼ、PPARγ、ERKを発現させたマウスから初代肝細胞を採取し、その培養上性について質量分析計を用いてプロテオーム解析を行い、網羅的に候補分子を探索する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 9 ページ: e110446
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巻: 9 ページ: e88602
10.1371/journal.pone.0088602.
http://www.diabetes.med.tohoku.ac.jp/