研究課題/領域番号 |
26293217
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
前川 聡 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00209363)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 飢餓 / 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / ケトン産生 |
研究実績の概要 |
1)糸球体上皮細胞特異的オートファジー欠損マウスを用いた検討。 糖尿病性腎症発症進展における糸球体上皮細胞オートファジーの役割を検討した結果、糸球体上皮細胞オートファジーは早期腎症の発症ではなく、ネフローゼ症候群のような高度蛋白尿に進展す因子として重要であることが明かとなった。本研究結果は現在論文投稿中である。
2)シャペロン介在性オートファジーと糖尿病発症とのかかわりを、シャペロン介在性オートファジーに必須の蛋白であるLamp2欠損マウスを用いて検討した結果、シャペロン介在性オートファジーの欠損は高脂肪食負荷肥満状態において肝臓からの抗肥満分子FGF21の分泌を増大させ、褐色脂肪組織での熱産生を亢進させることで抗肥満、抗糖尿病効果をもたらすことを明かとした。本研究結果は現在論文作成中である。
3)哺乳類におけるオートファジー機構の生理的役割を検討するため、各種代謝臓器におけるオートファジー欠損マウスを作製した。骨格筋特異的、脂肪組織特異的オートファジー欠損マウスは飢餓に伴う、糖産生、ケトン産生に大きな影響を与えなかったが、肝臓特異的オートファジー欠損マウスでは部分的なケトン産生の低下が確認された。さらに肝臓、腎臓両臓器におけるオートファジー欠損は完全なケトン産生の低下が確認された。これらの結果は哺乳類におけるオートファジーは飢餓時のケトン産生に不可欠であること、腎臓にもケトン産生を行う機能が備わっていることを示している。本研究結果は現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した遺伝子欠損マウスの作製ならびにその機能解析は予定通りに進行し、その結果も仮説を証明するに足るものであり、現在その成果を3つの論文にまとめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 糖尿病発症におけるマクロオートファジーならびにCMAの役割検討 糖尿病発症における食餌成分の違いとオートファジーの関連を検討する。まず、肥満糖尿病発症に対するオートファジーの役割を、全身Atg5遺伝子ヘテロ欠損マウス、Lamp2欠損マウスを用い検討する。既に全身Lamp2欠損マウスでは、高脂肪食負荷に伴う糖尿病発症が抑制されることが確認できている。また、既報からは全身Atg5遺伝子ヘテロ欠損マウスでも高脂肪食負荷に伴う糖尿病発症が予想される。一方、炭水化物主体の過剰摂取での検討は未だなされておらず、これらマウスに対し、高果糖負荷あるいはdb/dbマウスとの交配により炭水化物主体の食餌成分の過剰摂取が引き起こす肥満糖尿病に対するオートファジー不全の影響を検討する。食餌成分の違いにより、肥満糖尿病の表現系が変化するようであれば、臨床的にもオートファジーに着目した食事介入の可能性を示すことができる。
2) 血清メタボローム解析を行いたオートファジー不全を反映する血清バイオマーカーの探索。糖尿病予防にはオートファジー抑制が有用であり、合併症予防にはオートファジー活性化が有用となる知見が得られている。よって、オートファジーを標的とした安全な治療の確立の為には、まず生体におけるオートファジー不全状態を検出する必要がある。その為に、オートファジー不全マウス、肥満マウスの血清を用い、糖尿病に関連したオートファジー不全を反映する血清バイオマーカーの探索を目指す。オートファジー不全マウスと肥満マウスで共通した変化を示すバイオマーカーの検索から開始し、適宜ラパマイシン投与(オートファジー活性化)群を追加し、候補分子を絞り込む。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの予算使用となったが、一部の実験に遅延が生じたため、一部使用予定の予算が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度内に使用予定であった一部予算は、現在も継続して実施中の研究の必要経費としてH27年度に使用予定させていただく。
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