研究課題/領域番号 |
26293217
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
前川 聡 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00209363)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎臓 / 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / オートファジー |
研究実績の概要 |
本年度は主に糖尿病性腎症における血管内皮障害とポドサイト障害におけるオートファジーの役割について検証を進めた。当科のヒト腎生検組織を用いた検討では、難治性蛋白尿となる腎症症例ではほぼ全例、ポドサイト機能維持に不可欠なポドシン発現の減少が確認されており、ポドサイトの機能維持・生命維持が難治性蛋白尿に対する重要な治療標的であると考えられた。元来、糖尿病血管合併症の主体は血管内皮障害であることを考えると、ポドサイト障害を引き起こす背景には、内皮障害との何らかの病態形成における関連性が存在するはずである。しかし、その全容は十分に明らかにされていない。そこで、電子顕微鏡を用いた検討行い、糖尿病性腎症進展過程におけるポドサイト障害と内皮障害の関連を示す知見を得た。高脂肪食負荷2型糖尿病マウスでは、血管内皮障害が起こるがポドサイト障害は生じず軽度蛋白尿のみを呈した。一方、オルガネラ浄化機構オートファジーのポドサイト特異的欠損マウスは、通常食では蛋白尿を呈さないが、内皮障害を伴う糖尿病状態でのみ高度蛋白尿を示すことを確認した。さらに高脂肪食負荷モデルのみならず、血管内皮障害をもたらすノイラミニダーゼ投与による蛋白尿の出現は、ポドサイト特異的欠損マウスで顕著に増加した。これら一連の結果は、内皮障害に伴うアルブミン尿出現時のポドサイト内のオルガネラ機能維持が、高度蛋白尿への進行予防としての治療になる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの計画通りすすめてきた検討より、新たな仮説が生じ従来予定していた検討よりもさらに意義深い研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はポドサイト内オートファジー・リソソームの機能変化を起こす遺伝子改変マウスを用い、血管内皮細胞障害に対するポドサイト内浄化機構機能不全の腎症高度蛋白尿病態への関与をさらに検討する。 対照マウス、オートファジー機能不全マウス、リソソーム機能不全マウスに、高脂肪食負荷、内皮レクチンを障害するノイラミニダーゼ投与、eNOS欠損マウスとの交配を行う。内皮障害が生じ、普段濾過されない血漿内分子がポドサイトに到達することに対し、ポドサイト内のオートファジー・リソソーム維持機構がポドサイト機能維持に重要かを検討する。高脂肪食負荷以外の血管内皮障害モデルで悪化が見られない場合は、糖尿病に伴う血漿成分の変化もポドサイト障害に不可欠であることが示されることになる。 腎症での高度蛋白尿の一つのモデルとなる高脂肪食負荷オートファジー機能不全マウスのポドサイト内には、異常リソソームの蓄積が観察された。そこでリソソーム機能の是正が高度蛋白尿の治療標的となるかを検討するため、オートファジー不全マウスとTFEB-CA過剰発現マウスを交配し、リソソームバイオジェネシスを亢進させることで、ポドサイト障害・高度蛋白尿が改善するかを検討する。本研究で、TFEB-CA過剰発現がポドサイト保護をもたらす場合には、今後、TFEB活性化が難治性高度蛋白尿症例に対する創薬の標的となる可能性を示すことができる。
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