研究課題
本申請にあたって、具体的実験計画を立てた5つの項目、(1) hIAPPノックインマウスにおいて、膵β細胞のオートファジー活性を低下させた際のhIAPPの細胞毒性に与える影響とそのメカニズムを検討する。(2)糖尿病モデルdb/dbマウスの膵β細胞においてAtg5を過剰に発現させることにより、耐糖能が改善できるのかを検討する。(3)内膜障害後の平滑筋細胞増殖におけるオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスの大腿動脈wire傷害モデルを用いて検討する。(4) プラークに存在する血管平滑筋細胞のオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスとApoE欠損マウスを交配させたダブル欠損マウスにて検討する。(5) 動脈中膜の石灰化に関して、平滑筋特異的Atg7欠損マウスに高リン食+Calcitoriolを負荷することにより検討する。のうち、特に(4)に関して、今年度、研究が推進された(4)に関して、具体的には、平滑筋特異的Atg7欠損apoE欠損マウスとコントロールマウスにWestern diet(1.25%コレステロール含)を負荷し、大動脈の切片を用いて、動脈硬化に関する指標を比較検討する。また、マウスより初代培養した平滑筋細胞を用いて、平滑筋細胞のオートファジーがどのように動脈硬化の進展過程に寄与しているのかその作用機序を含めて明らかにする。現在までの結果として、14週間のWestern diet負荷の期間中に平滑筋特異的Atg7欠損apoE欠損マウス群では、約28%のマウスが死亡した(コントロール群は0.04%)。死亡した平滑筋特異的Atg7欠損apoE欠損マウスを解剖すると、胸部大動脈瘤破裂など明らかな死因が判明する個体があった。実際に、腎動脈上の同一部位で大動脈径は、平滑筋特異的Atg7欠損apoE欠損マウスにおいて増加しており、動脈硬化よるPositiveリモデリングが進展していると推測している。
2: おおむね順調に進展している
(1) hIAPPノックインマウスにおいて、膵β細胞のオートファジー活性を低下させた際のhIAPPの細胞毒性に与える影響とそのメカニズムを検討する。:本研究に関しては、一定のデータが出て、論文報告済みである。(2)糖尿病モデルdb/dbマウスの膵β細胞においてAtg5を過剰に発現させることにより、耐糖能が改善できるのかを検討する。:この研究に関しては、あまり進んでいないが、研究計画にも少し問題があることがわかり、下記のような対策を立てている。(3)内膜障害後の平滑筋細胞増殖におけるオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスの大腿動脈wire傷害モデルを用いて検討する。(4) プラークに存在する血管平滑筋細胞のオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスとApoE欠損マウスを交配させたダブル欠損マウスにて検討する。(5) 動脈中膜の石灰化に関して、平滑筋特異的Atg7欠損マウスに高リン食+Calcitoriolを負荷することにより検討する。:(3)-(5)は、平滑筋細胞におけるオートファジーの意義の検討に関する検討であるが、上述の通り、特に(4)に関して、順調に実験結果が出ているため、昨年度は(4)に焦点を当てて実験を行った。
(1) hIAPPノックインマウスにおいて、膵β細胞のオートファジー活性を低下させた際のhIAPPの細胞毒性に与える影響とそのメカニズムを検討する。:本研究に関しては、一定のデータが出て、論文報告済みである。(2)糖尿病モデルdb/dbマウスの膵β細胞においてAtg5を過剰に発現させることにより、耐糖能が改善できるのかを検討する。:本研究に関しては、Atg5の発現過剰にてオートファジーが促進されるという既報に基づく検討であるが、本領域のエクスパートとのディスカッションの結果、その可能性は極めて低いと考えられ、Rubiconノックアウトマウスを用いた検討に変えることとして、現在このノックアウトマウスを入手済みである。(3)内膜障害後の平滑筋細胞増殖におけるオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスの大腿動脈wire傷害モデルを用いて検討する。(4) プラークに存在する血管平滑筋細胞のオートファジーの役割を平滑筋特異的Atg7欠損マウスとApoE欠損マウスを交配させたダブル欠損マウスにて検討する。(5) 動脈中膜の石灰化に関して、平滑筋特異的Atg7欠損マウスに高リン食+Calcitoriolを負荷することにより検討する。:上述の通り、平滑筋細胞におけるオートファジーの意義の検討に関しては、順調に実験結果が出ている。(4)に関しては研究結果がまとまりつつあるため、今年度、最後の詰めの実験にかかる。と同時に、(3)も(5)もいずれも実験動物を飼育中であり、来年度にその解析に移る。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Mol Endocrinol
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10.1210/me.2014-1367
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