研究課題
甲状腺癌幹細胞の幹細胞様性質維持に重要なシグナル伝達経路に関して、新たに収集した細胞株での実験を追加した。甲状腺癌細胞株は、STR解析により広く他種癌からのコンタミネーションや冗長性が疑われる状況であり、確認が取れた細胞のみを実験に使用した。JAK/STAT3/NF-kappaB経路に対する様々な阻害剤を使用し、スフィア形成能・足場非依存性増殖能を調べ、確かにこのシグナル伝達経路が、通常の癌細胞の増殖よりもより特異的に幹細胞様性質に重要であることが証明された。これまでに、甲状腺癌幹細胞の分取マーカーとして最も信頼性の高いとされていたALDH活性だが、これらの阻害剤を使用してもこのALDH活性に影響は無く、ALDH活性は単なるマーカーであり、幹細胞様性質の機能には関与していないことが示唆された(現在論文投稿中)。これらの成果によって、新規分子標的治療の基盤を確立することが出来た。甲状腺癌悪性化の分子メカニズムに関しては、TERTプロモーター変異に着目した研究を行った。多数の臨床検体を用いた解析を行い、このTERTプロモーター変異には強い年齢相関性があることが分かり、残念ながら若年者の癌では悪性化への関与を示唆する結果は得られなかった。しかし成人、特に高齢者ではBRAF変異とこのTERTプロモーター変異の共存は非常に強く悪性化・予後と相関するというデータが得られ、新たな分子診断法の基盤的証拠を得ることが出来た。この成果を穿刺吸引細胞診検体を用いた分子診断に活かすべく、穿刺吸引細胞診後の針洗浄液を用いた検体よりの遺伝子増幅、正確なコピー数測定法を確立した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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