研究課題/領域番号 |
26293223
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
堀江 公仁子 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (90261982)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳がん / エストロゲン受容体 / RNAシーケンス |
研究実績の概要 |
26年度までにRNAシーケンス法により同定し、エストロゲン作用との関連で注目した複数の長鎖非コードRNAについて、さらに臨床浸潤性乳がん検体における発現をRNAシーケンス法により解析し、乳がん臨床検体における病態的意義を見出した。これらの長鎖非コードRNAに対する各数種類のsiRNAのうち、細胞増殖をよく抑制する核酸剤について、ヌードマウスにおけるホルモン治療的抵抗性モデル乳がん細胞の腫瘍形成への治療効果を検討し、注目する長鎖非コードRNAが治療標的候補になりうることを見出した。長鎖非コードRNAの発現を抑制した際のエストロゲン受容体シグナルについて、クロマチン免疫沈降やプロモーター活性試験等で解析を進め、またマイクロアレイ解析を行った。ホルモン療法抵抗性獲得にかかわるマイクロRNAとしてmiR-378a-3pを小分子RNAシーケンス法により同定し、その標的となるゴルジ体蛋白質GOLT1Aを同定して、これら分子が乳がんの新しい診断・治療に応用できる可能性を見出した。ストランド特異的ペアエンドのRNAシーケンス法の特性を生かし、乳がんにおいて融合蛋白質を作りうるキメラ遺伝子の検出を行うべくバイオインフォマティクス手法を向上させ、臨床乳がん検体から数個の候補キメラ遺伝子の同定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞株からエストロゲン作用との関連で同定された長鎖非コードRNAが、臨床乳がん検討においても病態的意義をもつ可能性を見出し、さらに動物モデルでの治療効果を認めるsiRNAの作製にも成功しているため。長鎖非常コードRNAのエストロゲン受容体シグナルに対する影響も解析が進みつつある。マイクロRNAとその標的分子について、ホルモン治療抵抗性がんにおいて発現変化する組み合わせを同定し、その診断的意義を見出して、論文発表を行った。また、ホルモン治療抵抗性との関連が示唆されている融合蛋白質をコードしうるキメラ遺伝子の解析手法についても確立しつつあり、新規診断・治療標的候補として期待される。
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今後の研究の推進方策 |
乳がんにおけるホルモン応答性長鎖非コードRNAの作用を明らかにするため、これらRNAと反対のストランドにセンス/アンチセンスの関係で位置するコード遺伝子の発現に対する影響を検討するとともに、RNAに結合する蛋白質をRNA免疫沈降やCLIPシーケンス等で同定し、エストロゲン受容体を含む転写因子複合体への影響を細胞モデルにて検討する。長鎖非コードRNAがゲノムワイド作用をもつことが予想される場合には、RNA配列の断片から結合するDNA領域を濃縮するChIRP法等を用いて、シーケンス解析により作用領域を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究推進のために人件費を確保する必要を考え、物品購入を効率的に運用し、物品費が予定よりも少額となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
人件費、旅費、試薬・消耗品等の物品費、その他として学会参加費等に使用予定である。
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