研究課題
鉄芽球性貧血モデルマウスについては、GATA1の発現制御領域(G1HRD)下流にrtTAを組み込んだコンストラクトをトランスジーンしたマウス(Tg-G1HRD-rtTAマウス)と、TRE下流にALAS2の発現を抑制するshRNAを組み込んだコンストラクトをトランスジーンしたマウスを(Tg-EGFP-ALAS2 shRNAマウス)の掛け合わせにより作成する計画である。Tg-G1HRD-rtTAマウスは作製済であるが、Tg-EGFP-ALAS2 shRNAマウスについては作製したALAS2 shRNAによるALAS2発現抑制が十分でなく、新たなラインを作製中である。遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)症例由来のiPS細胞については、染色体核型、3胚葉への分化能、ALAS2遺伝子変異を確認したのち、赤血球へのin vitro分化系を確立した。その結果、XLSA由来赤血球ではグロビンをはじめとする赤血球特異的遺伝子の発現が抑制されていることが明らかとなった。ただし、鉄芽球の出現は確認できておらず、現在より赤血球分化が良好な培養条件の確立を目指している。新たな遺伝性鉄芽球性貧血症例のゲノム解析については、全エクソン解析で既知の変異が認められなかった症例について全ゲノム解析を予定している。
2: おおむね順調に進展している
テトラサイクリンーshRNAを用いたトランスジェニックマウスについては、すでに複数のライン作製に取り組んでおり、次年度には作製が見込まれる。shRNAの遺伝子抑制効果についてはin vitroの赤血球細胞株で確認済であり、トランスジェニックマウスでのテトラサイクリン誘導によるin vivo遺伝子抑制も効率的に達成できると予想している。また、疾患特異的iPS細胞についても複数のラインが樹立でき、赤血球へのin vitro分化系も確立できた。この系により赤血球を得ることに成功しており、初年度の目標はほぼ達成できたと考えている。新たな遺伝性鉄芽球性貧血家系からの新規原因遺伝子同定については、候補としていたAPEX1のノックアウトマウス等で鉄芽球性貧血の形質が得られなかったため、遺伝子変異が認められていない家系を対象に全エクソン解析を行った。今のところ、新規の候補遺伝子の同定にいたっていないため、次年度以降全ゲノム解析を予定している。候補遺伝子の解析から新たな家系の解析へとステップを踏んで研究を進めており、新規原因遺伝子の同定についてもまだ結果は得られていないが、研究の進捗については順調と考えている。
テトラサイクリン誘導システムによるモデルマウス作製(Tg-G1HRD-rtTAマウスxTg-EGFP-ALAS2 shRNAマウス)については、Tg-EGFP-ALAS2 shRNAマウスが樹立次第、掛け合わせを開始し、早期に作製する予定である。またこのシステムが予想通りに進まない可能性もあることから、現在CRISPERシステムを用いてALAS2遺伝子に変異を導入したマウスを並行して作製中である。また、遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)症例由来のiPS細胞の赤血球へのin vitro分化系も引き続き改良中であるが、プライマリー分化系は安定しないことが予想されることから、疾患iPS細胞から赤血球細胞株を樹立することとし、現在株化を行っている。このことにより、安定した疾患由来の変異を有した赤血球を作製することが可能となり、その形質解析も容易になることが予想される。
iPS細胞の赤血球分化系実験やモデルマウス作製・解析が複数年にまたがったため、次年度使用額が生じたものである。
赤血球分化系実験やモデルマウス解析等の研究を遂行するために必要な経費として、平成27年度請求額と併せて使用する予定である。
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