研究課題/領域番号 |
26293227
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本田 浩章 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40245064)
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研究分担者 |
上田 健 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60585149)
本田 善一郎 お茶の水女子大学, 保健管理センター, 教授 (70238814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化・脱メチル化 / ヒストンH3K27 / 骨髄異形成症候群 / PRC2 / Jmjd3, Utx |
研究実績の概要 |
今年度は、我々は以下のことを行なった。 (1)Eed cKO変異マウスに認められた造血異常が造血細胞自体によるものであるかどうかについて、競合的骨髄移植の系を用いて検討した。まず、コントロールマウスとEedホモ欠失マウスの造血幹細胞(Ly5.2系統)を単離し、competitorの骨髄細胞(Ly5.1系統)と共に放射線照射したLy5.1系統マウスに移植した。移植マウスにおけるLy5.2細胞を解析したところ、コントロール細胞移植マウスに比較してEedホモ欠失細胞移植マウスでは骨髄球系、B細胞系、T細胞系の全ての細胞系列でキメラ率の低下が認められ、Eedホモ欠失マウスに認められた造血不全は造血細胞自律的であることが示された。また、Eedへテロ欠失マウスの造血幹細胞についても同様の実験を行ない、コントロール細胞移植マウスに比較してEedへテロ欠失細胞移植マウスでは骨髄再構築能の有意な上昇を認め、Eedへテロ欠失マウスに認められた白血病感受性は造血細胞自律的な増殖能亢進によるものであることが示された。 (2)H3K27のメチル化は、EEDをcomponentとするPRC2により正に制御(メチル化の方向に制御)されていると共に、H3K27特異的脱メチル化酵素であるJMJD3およびUTXにより負に制御(脱メチル化の方向に制御)されている。H3K27メチル化による造血幹細胞の制御機構およびその逸脱による造血器腫瘍発症機構の全体像を明らかにするために、Jmjd3 cKOおよびUtxのcKOマウスの作製と解析を必要がある。すでにJmjd3 cKOおよびUtxのcKOの相同組換えES細胞が得られており、キメラマウス作製およびgermline transmissionによるヘテロマウス作製を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、平成27~28年度の研究計画として、 (1)Eed cKOヘテロマウスにおける疾患発症が造血細胞自律的であることの検討 (2)H3K27脱メチル化酵素であるJmjd3およびUx cKOマウスの作製と、H3K27メチル化脱制御による造血器腫瘍発症機構の総合的解析 の2項目を挙げた。 上記の研究実績に記載した様に、(1)については、コントロールマウス、Eedホモ欠失マウス、およびEedへテロ欠失マウスの造血幹細胞を用いた競合的骨髄移植の系を用いて検討を行なった。Eedホモおよびへテロ欠失マウスのいずれにおいてもドナーマウスの表現型が再現されたところから、これらのマウスに認められた造血異常は造血細胞自律的であることが示された。さらに、Eedホモ欠失マウスにおいては遺伝子発現変化による分子機構の解析を行ない、Cell Adhesion Molecule経路の亢進を認めた。実際にコントロールおよびEedホモ欠失マウスの造血幹細胞を用いた接着実験で、コントロール細胞に比較してEedホモ欠失細胞でfibronectinに対する細胞接着能の有意な亢進を認め、遺伝子発現変化で認めた結果が実際の細胞機能変化を誘導していることが示された。(2)については、H3K27特異的脱メチル化酵素であるJmjd3 KOマウスとUtx cKOマウスの作製を行なっている。すでに各々のcKOマウス作製のための相同組み替えES細胞が得られており、今後キメラマウスおよびヘテロマウスの作製を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成28年度では、H3K27を負に制御するJMJD3およびUTXのcKOマウスの解析を行なう。まず、Jmjd3 KOマウスとUtx cKOマウスの造血系の解析を行ない、異常を認めた場合、Eed cKOマウスと同様に、i) 細胞自律的な変化であるかどうかを確認するための競合的骨髄移植、ii) 分子機構を解析するためのトランスクリプトームを用いた網羅的発現解析、iii) 腫瘍感受性変化を解明するためのレトロウイルスによるinsertional mutagenesis、等を行なう。Jmjd3 KOマウスとUtx cKOマウスの解析結果、およびこれまで得られているEed cKOマウスの解析結果を比較検討し、ヒストンH3K27メチル化による造血細胞制御機構、およびその脱制御による骨髄異形成症候群を含めた造血器腫瘍発症機構について総合的な解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究費のうち、次世代シークエンス解析に予定していた研究費について、解析に必要な細胞数が今年度内に十分量が得られなかったため、次年度に解析を行うこととした。従って、今年度の研究費のうち149,761円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
必要細胞が得られ次第、次世代シークエンス解析を行う予定である。
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