研究実績の概要 |
本研究では、造血幹細胞の老化に伴う自己複製・分化能の低下に関連して、細胞分裂制御の変化およびテロメアDNA損傷応答(テロメアDDR)の作用を明らかにし、テロメアDDRの抑制により、自己複製を誘導することを目的として研究を進めている。 1. 造血幹細胞の新たな老化の評価系の確立: 4週齢(young: Y)、8週齢(adult: A)、および1.5年齢(old: O)の造血幹細胞と前駆細胞の遺伝子発現プロファイルを学習させた人工ニューロンネットワーク(ANN)を用いて細胞分裂後の娘細胞ペアの遺伝子発現パターンを解析することにより、娘細胞ペアの分裂様式(A-A, A-O, O-O, Y-A, Y-O, Y-Yの6種類の分裂パターン)を分類し、細胞分裂による造血幹細胞の老化を直接的に評価することが可能となった。 2. Pot1aの導入による造血幹細胞の分裂様式の変化: 成体マウス造血幹細胞をPot1aの細胞膜透過性タンパク(MTM-Pot1a)存在下で培養し、娘細胞ペアの分裂様式をコロニーアッセイを用いて比較した。その結果、MTM-Pot1aによって2個の娘細胞の両方が多分化能を持つnmEMコロニー (n: 好中球, m: マクロファージ, E: 赤血球, M: 巨核球)となるペア(nmEM-nmEMペア)の頻度が増加することが分かった。 3. Pot1a以外のShelterin分子(Tpp1, Tin2)に加え、Pot1の核内移行に関わることが報告されているFoxp2のMTMタンパク、レトロウイルスの作製を行った。さらに、造血幹細胞にFoxp2を導入して培養を行ったところ、長期骨髄再構築能をもつ幹細胞分画が維持されることが分かった。
|