研究課題
本研究では、老化に伴う造血幹細胞の機能維持と細胞分裂制御に関するテロメアDNA損傷応答(DDR)抑制の役割について研究を行った。H28年度は、Shelterin分子Pot1aによる造血幹細胞の自己複製能維持の分子機構の解明を目指して研究を行い、以下のことを明らかにした。1. Pot1aによるDNAダメージの抑制:これまでにPot1aが造血幹細胞のテロメアDDRを抑制することを明らかにしていたが、これに加えて本年度は、新たにPot1aが非テロメア領域においてもDDRも抑制することを見出し、これには活性酸素種(ROS)の産生抑制が関わっていることを明らかにした。造血幹細胞におけるグローバルなDDR抑制は、これまでに報告されていない新たなPot1の機能であると考えられる。2. Pot1aによる造血幹細胞の代謝調節とROS産生抑制:Pot1aを導入した造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルを解析したところ、Pot1aによってOxidative phosphorylation、Glycolysis関連遺伝子の発現が抑制され、一方では、造血幹細胞関連遺伝子の発現が亢進することがわかった。さらに、Pot1aは造血幹細胞のROS産生を抑えることも明らかとなった。また、造血幹細胞にPot1aを導入するとMtor (mTOR) およびRptor (Raptor の発現が抑制された。逆に、Pot1aをノックダウンするとMtorとRptorの発現が上昇することがわかった。これらの結果から、Pot1aはmTORシグナルを制御することによりエネルギー代謝を調節するとともに、ROSの産生を抑制して造血幹細胞の自己複製能の維持およびグローバルなDDRの抑制に貢献していると考えられた。さらに上記の研究内容に加え、Pot1の核内移行に関わるFoxp2の機能解析を行い、Foxp2が造血幹細胞において、細胞周期制御因子p21の発現を制御し、自己複製能の維持に働くことがわかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Blood
巻: 128 ページ: 638-649
10.1182/blood-2016-01-694810
Science
巻: 354 ページ: 1156-1160
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http://www.scr.med.kyushu-u.ac.jp/