研究課題
APS(抗リン脂質抗体症候群)のモデルマウスとして臓器梗塞、とりわけ日本APSでもっとも多い脳梗塞を来すモデルマウスを作成した。マウスモノクローナル抗C1q抗体であるJL-1を抗リン脂質抗体と共投与することによって、補体活性化を誘発し、よりAPS患者血液中で起こっている病態機序に近づけたモデルを作成した。最適と考えられるJL-1濃度、抗リン脂質抗体濃度について規定しており、それらを元にマウスを刺激した。APS患者データから血清中の補体制御因子であるH因子の低下例が高率にあることが判明し、現在多数例で確認を行った。血清H因子の低下は著明な補体経路の活性化を来たし、特に抗C1q抗体の存在下では相乗的に活性化された。APSでは、特に劇症型APSなど重症例で著明な補体活性化を来す例が多く、ApoEKOマウスを用いる上記モデルマウスで臓器梗塞が確認できない場合には、H因子KOマウスを用い、JL-1, 抗リン脂質抗体を共投与するモデルマウスについても検討が必要と考えた。
3: やや遅れている
マウス実験の申請許可に時間を要したことと、in vitroでのモノクローナル抗C1q抗体の単球・血管内皮細胞刺激についての条件設定に時間を有している。ただ、並行して行っているマウスモデルの作成においてはAPS症状を来すと考えられる個体が出現しており、今後数ヶ月間で、集中的にマウスへの投与を行い、血栓症の発現について確認する。行い、血栓症の発現について確認する。
動脈硬化モデルマウスでは大量の抗リン脂質抗体(APL)と感染症等の生体ストレスを模したLPSの共投与が明らかな血栓症誘発を認めないことを確認した。一方、補体第1成分(C1q)に対する自己抗体がAPS患者で高率に発現し、感染症など生体ストレス時に炎症や向血栓状態を亢進させ、難治性血栓症に関与することを報告し(Oku et al Rheumatology(Oxford) 2016 in press, Oku et al Autoimmun Rev 2016 in press)、マウスモノクローナル抗C1q抗体 JL-1が、in vitroでマウス単球細胞株RAW264.7における向血栓傾向を亢進する(凝固蛋白の産生亢進)ことを確認した。これを基礎データとしJL-1をAPLと共投与し補体活性化を誘発して血栓発症モデルを作成中。現時点で少数のマウスで条件検討をしているが、APS症状の発現が疑われる個体が認められ解析中。JL-1単独投与による血栓発症も検討中。明確な血栓傾向が認められなかった場合、LPS投与を行う。APSでは感染症を機に補体系の異常活性化に続き血栓傾向の著しい増悪が認められることを研究者は明らかにした(Oku et al, Rheumatology(Oxford), 2016, in press)。LPS投与によりAPS患者の感染時の血栓傾向モデルを作成できると推測する。感染モデルでも血栓傾向が明らかでない場合は、塩化鉄(II)投与による血栓症を観察。塩化鉄(II)血栓モデルとして既にestablishされているが、APSの病態機序は既存リスクによる血栓リスクを亢進し血栓サイズの増大効果があると考えられ、血栓サイズ増大等血栓傾向の亢進について検討する。モデルマウスを作成後に、血栓の巨視的観察(剖検による血栓量の測定)、微視的観察(カーボンブラック法、TTC(2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム)染色による血栓量の定量)、を行う。臓器梗塞を伴う血栓症の発症が確認できれば、モデルマウスに対して抗血小板薬、抗補体治療を行い血栓形成の抑制効果を観察する。
消耗品の納品が遅れ、支払が4月になったため未使用額が生じた。
3月に消耗品費を購入済みである。
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Rheumatology (Oxford)
巻: in press ページ: in press
in press
Autoimmune Reviews
Lupus
巻: 24 ページ: 1135-1142
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Japanese Journal of Clinical Immunology
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