研究課題
自己反応性T細胞の腸管での制御について研究を行った。髄鞘蛋白であるMOGに特異的に反応するT細胞受容体のトランスジェニックマウス(2D2)における腸管在住の2D2-IELと、膵島抗原に特異的に反応するT細胞受容体のトランスジェニックマウス(KRN)の腸管在住のKRN-IELを用いて、in vitroにおいてエフェクターT細胞の増殖を抑制することを明らかにした。2D2-IELを分離し、マウスに移入後に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導すると、病態が抑制された。中枢神経内には2D2-IELの浸潤がみられ、浸潤した細胞では腸管に比較してLAG3の発現が上昇しており、2D2-IELと抗LAG3抗体を同時に投与すると病態抑制が消失したことから、病態抑制にLAG3が重要であることが明らかとなった。また、KRN-IELはEAEを抑制しないことから、抗原特異的抑制であることがわかった。さらに、2D2-IELは、食餌中に抗生剤投与やAhRリガンドを添加する影響をうけることから、腸内環境により調節されることが示唆された。また、2D2-IELをB6マウスに投与すると、腸管において増殖がみられることから、腸内にMOGと交差する抗原が存在することが示唆された。自然リンパ球については、MAIT細胞は関節リウマチ(RA)や強直性脊椎炎(AS)などの関節炎、潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患、SLEの血中で減少していた。UC、AS、SLEでは疾患活動性とMAIT細胞のCD69の発現が相関していた。UC、SLEにおいては、IL-18濃度がCD69の発現と相関がみられた。UCでは腸粘膜局所にMAIT細胞の集積がみられ、疾患活動性と細胞集積が相関していた。MAIT細胞の役割を明らかにするため、UCモデル、SLE モデルについて、MAIT細胞を欠損するMR1KOマウスにおける病態を検討中である。多発性硬化症においては健常者と有意差のある菌について、生物学的影響について検討中である。
2: おおむね順調に進展している
自己反応性T細胞の腸管での制御に関する研究は目標を十分達成した。自己免疫疾患における自然リンパ球の解析は、予定通り行った。腸内細菌の解析については、多発性硬化症においては健常者と有意差のある菌についての生物学的影響について検討中であるが、他の疾患については検体収集中でありやや遅れているが引き続き検体収取を行う。以上より、全体としてはおおむね順調に進展している。
自己反応性T細胞の腸管での制御については、2D2-IELが腸管でどのように病態抑制のフェノタイプを獲得するかについて、腸内における環境要因について検討を続ける。昨年までの研究で、MAIT細胞は関節リウマチ(RA)や強直性脊椎炎(AS)などの関節炎、潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患、SLEの血中で減少していることが明らかとなった。SLEではMAIT細胞の細胞死が亢進していたが、RA, AS, UCでは細胞死の亢進はみられず、異なる機序で病態に関与していることが示唆された。28年度は、これらの疾患におけるMAIT細胞の関与を明らかにするため、MAIT細胞の存在しないMR1ノックアウトマウスにおける病態変化を検討するとともに、MAIT細胞を刺激または阻害するリガンドを用いて、これらの疾患の動物モデルに投与しその効果を検討する。腸内細菌解析については、多発性硬化症において特定の腸内細菌の変化が明らかとなっているので、それらの腸内細菌の代謝産物が病態に関与する可能性について関節炎モデル、実験的自己免疫性脊髄炎モデルについて検討する。関節リウマチ、SLEにおける腸内細菌叢解析については、引き続き検体収集を続け解析する。
腸内細菌解析について、まだ検体収集中であるため。
収集した検体についての解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 5件、 招待講演 8件)
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