研究実績の概要 |
平成27年度は、種々の化合物 (GRL-084-13, GRL-085-13, GRL -087-13 & KU-241) の結合様式を詳細に検討した (Amano, Aoki & Mitsuya, unpublished data)。特に、化合物の構造中にフッ素原子を含み、過去に例を見ない程強力な抗HIV-1効果とHIV-1の薬剤耐性獲得に極めて高い抵抗性を発揮する化合物、KU-241及びその誘導体 (KU-100 & KU-300) についての詳細な解析を行う事で、(1) HIV-1が薬剤耐性を獲得する機序を検討すると共に、(2) 薬剤耐性を獲得したPR (PRMDR) に対して阻害効果を発揮する為に必要な化合物の種々の部分構造とその作用機序を解明した (Ghosh & Mitsuya, J Med Chem. 58, 6994-7006, 2015; Amano & Mitsuya, Antimicrob Agents Chemther, 59, 2625-2635 2015)。更に予備的な結果ではあるが、(3) 得られた結果を基に、新規化合物を設計、HIV-1に対する多剤併用療法 (ART) に用いられる複数の薬剤に対して耐性を獲得したHIV-1変異株 (HIV-1DRVRP51) に対してもHIV-1野生株と同等の阻害活性を有する化合物 (GRL-057 & -058) の同定に成功した (Aoki & Mitsuya, unpublished data)。 本研究成果は、より強力で薬剤耐性を生じ難い新規化合物の設計・開発の基盤となる重要な成果であり、本研究で得られた化合物群は、臨床応用への候補化合物に資すると強く期待できる事から、本年度の研究実績は抗HIV剤開発の分野の発展と社会的有用性という点において極めてインパクトのある成果であると言える。
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