研究課題/領域番号 |
26293240
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
滝口 雅文 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00183450)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | AIDS / HIV-1 / T細胞 / 変異 |
研究実績の概要 |
1)HLAアリールと相関するHIV-1変異の解析:無治療の日本人HIV-1サブタイプB慢性感染者430名を対象として、HIV-1のGag、Pol、Nef領域の遺伝子配列を決定した。その結果、Gag、Pol、Nef遺伝子領域に、それぞれ合計284個のHLA-Associated polymorphism (HLA-AP)を同定できた。各遺伝子上のHLA-AP同定より明らかとなったアミノ酸変異の合計数とCD4陽性細胞数もしくはウイルス量との相関関係を解析したところ、相関関係は弱いが感染者のウイルス量はPolにおけるHLA-ASの出現数と有意に逆相関し、特にHLA-B*52:01関連HLA-ASとより有意に強く逆相関していることが明らかとなった。
2)HIV-1 Nef, Gag, Pol領域に対するCTLの反応の解析:日本人HIV-1感染者401人について、HIV-1特異的CD8陽性T細胞の反応を網羅的に解析することで、HIV-1コントロールに関与するCD8陽性T細胞の同定を、overlapペプチドを用いて試みた。その結果、HIV-1感染制御に関与した13個のエピトープ特異的CD8陽性T細胞を見つけ出し、そのうち9個は新規のエピトープであった。またこれら13エピトープへの反応が血漿中ウイルス量と強い負の相関、CD4陽性T細胞数と強い正の相関を示し、これらのT細胞の相乗効果が体内でのHIV-1コントロールに対して大きく影響していることが判明した。これら13エピトープのうち9つはHIV-1 サブタイプB感染者において保存されており、3つは特異的T細胞によって交叉認識されることが判明、これら12エピトープはエイズワクチンの抗原としてきわめて有用であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HLA-A*24:02に相関しているNef135番目の変異(YからF)は、2つ長さが違うエピトープ(RW8とRF10)特異的CTLにより選択されることが明らかにできた。この変異ウイルスは新たなエピトープ(RW8-2F, RF10-2F)を作り出すが、RF10-2Fのみが新たなCTLを誘導することができること、一方、誘導されたRF10-2F特異的CTLは新たなHIV-1、あるいは元の野生型のHIV-1を選択できなかった。これはこの変異により、エピトープペプチドの結合の安定性が落ちることにより、免疫原性が大きく低下するからであることを明らかにできた。このように、HIV-1とそれを認識できるCTLは相互進化していることが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である28年度は、病態進行に関連した変異を持ったウイルスを作製し、その増殖能を解析、増殖能の低下もしくは増強がみられるかを明らかにする。これにより、変異によるウイルス増殖能自体の病態進行に関与する程度を明らかにする。さらに多くのCTLクローンを作製し、HIV-1感染細胞認識能、HIV-1増殖抑制能、テトラマー結合能などを調べ、逃避変異選択機序を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
HIV-1とそれを認識できるCTLの相互進化について明らかにすることを優先し、この部分以外の予算の執行が遅れたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
病態進行に関連した変異を持ったウイルスの作製や増殖能の解析等のための試薬・器具等の物品費、実験補助のための人件費、研究打ち合わせや研究成果発表にかかる旅費、その他、試料の輸送費等に使用する計画である。
|