研究課題
本研究は、2013年に新しく同定された新規原因遺伝子RIT1変異陽性患者を同定し、その臨床症状の詳細(心奇形・癌合併)を明らかにし、RIT1の機能を明らかにすることを目的とする。またRASopathyマウスモデルの作製とその病態解明をめざす。①新規原因遺伝子RIT1変異患者の臨床像の確立:RASopathy患者に対して遺伝子診断を行なった。既知の遺伝子変異陰性患者においてRIT1のスクリーニングを行い、新たにRIT1遺伝子変異を同定した。その詳細な臨床症状を収集し解析を行った。②RIT1変異蛋白が活性化する下流のシグナル同定:患者で同定され、これまでにまだ機能解析をおこなっていない遺伝子変異を有するRIT1 cDNAをもつ発現ベクターを作成した。293細胞にトランスフェクションを行い、蛋白の発現を確認した。その下流のシグナル分子を解析したところ変異を導入した細胞においてリン酸化ERKの上昇は見られなかった。次にRAS/MAPKシグナル伝達経路の下流にあると考えられる複数の転写因子の転写活性を解析を行った。③RASopathyモデルマウスの病態解析:BRAF遺伝子変異ノックインマウスは、先天性心疾患・浮腫・骨格の異常などを呈して胎生致死であることが明らかになった。その遺伝的背景を変えることで胎生致死を回避し成獣まで生きるマウスを現在作成・検討中である。④新規原因遺伝子検索:RIT1遺伝変異同定後に他の研究室から報告された新規原因遺伝子の有無をこれまで収集したサンプルにて解析中である。
2: おおむね順調に進展している
2013年にヌーナン症候群においてRIT1変異を同定したが、RIT1遺伝子変異を持つ患者は予想より多く、ヌーナン症候群の約5%程度を占めることがわかってきた。また第2コホートの患者の詳細な臨床症状を収集することにより、RIT1遺伝子変異をもつ患者の臨床的な特徴を明確にすることができると考えられる。細胞培養におけるRIT1機能解析や、BRAF変異をもつ成獣マウスモデルの作製もおおむね順調に進んでいる。
本研究分野では、次々と新規原因遺伝子と考えられる遺伝子が報告されてきており、遺伝子診断に対応しながら新規原因遺伝子解析を行っていく必要がある。そのためには次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析系を整備し、新たに報告された新規原因遺伝子についてスクリーニングを継続していく。RIT1はRAS GTPaseであるが、その活性化機構や下流のシグナルに関してはは未知の点が多い。今後細胞培養実験、あるいはモデルマウス作製を通してRIT1変異の分子機構を明らかにしていく。
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