研究課題
未熟児や先天性心疾患患児では胎生期特有の血管である動脈管を人為的に閉鎖ないし開存させなくてはならない場合がしばしばある。動脈管閉鎖の分子機序を解明し、新たな治療法を開発することは小児医療上、極めて重要な研究課題である。我々は動脈管が将来閉塞すべき運命にある血管として、隣接する大動脈や肺動脈など大血管には見られない血管構造と機能を有していることに 注目し、その分子機序の解明を目指している。平成26年度は研究成果として、トロンボキサン A2 受容体(TP)刺激が動脈管リモデリングを促進することを明らかにしたこと、弾性線維異形成・低形成と動脈管開存症を高率に発症することが知られている BN ラット動脈管における網羅的遺伝子発現プロファイルを明らかにしたこと、等を論文発表した。これらの論文や総説を含めて、平成26年度は動脈管関連論文を5編発表することが出来た。さらにNFkBシグナルが動脈管の機能的閉鎖、解剖学的閉鎖に及ぼす影響について検討を行い、NFkB阻害剤に動脈管の機能的閉鎖促進作用があることを見出し、学会報告をした。その作用機序に関してさらに検討し、論文としてまとめる予定である。プロスタグランジンE以外の動脈管リモデリング因子を見出すために、ニワトリ胚を用いた実験系を立ち上げ、網羅的遺伝子解析を行った。その中からいくつかの候補因子と思われるものが見出せたため、今後詳細に検討を行う予定である。途中経過に関しては学会報告を行った。BN ラット動脈管における網羅的遺伝子発現プロファイルの結果から、細胞外基質であるNovに注目し、動脈管リモデリングへの影響を検討したところ、Novは動脈管リモデリングに対して抑制的に働く可能性があることを示唆する実験結果が得られた。今後、その検証と機序を検討してゆく予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画は概ね順調に実施され、平成26年度には動脈管研究関連論文を5編発表することが出来たため。
1. PGE2-EP4刺激下における非cAMP経路の動脈管閉鎖機序の解明: PGE2-EP4刺激によって、cAMPを介さずに動脈管閉鎖を制御するシグナル経路の存在(Src-PLC経路やNFkB経路など)が示唆されたため、平成27年度はEP4-Src-PLC経路が生体内においても弾性線維形成の抑制に働くことを確認すること、NFKB抑制が動脈管機能閉鎖を促進する分子機序を解明することをめざす。2. PGE2-EP4シグナル経路を介さない動脈管リモデリング因子の同定: 平成27年度は酸素やエンドセリンが、動脈管リモデリングにも関与しているか否かを明らかにする。ニワトリ胚動脈管で見出した動脈管リモデリング因子をさらに詳細に検討する。3. 動脈管内皮細胞特異的因子の役割の解明: 平成27年度はTgfb2, Fgf10の動脈管内膜での発現、機能的閉鎖や血管リモデリングに果たす役割を明らかにする。4. 動脈管細胞外基質のリモデリングに果たす役割の解明: 平成27年度は動脈管で細胞外基質であるNov、Tnnが血管リモデリングに果たす役割の解明を目指す。
購入予定であったデュアルワイヤーミオグラフシステム・ 410A (1 x 290万円)が大学予算で購入出来ることになり、そのための経費が不要になった点、同じく購入予定であったデジタルマイクロスコープ装置ベーシックモデル・VH-5500(1 x 270万円)については代替品として、より安価な顕微鏡を購入できた点が最も大きな理由である。
実験のさらなる進展を図るため、助教を雇用すること、血管収縮に関わるカルシウム動態を計測するための装置を購入することにあててゆく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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