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2015 年度 実績報告書

動脈管閉鎖の分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 26293249
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

南沢 享  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40257332)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード新生児 / 未熟児 / 先天性心疾患 / vascular remodeling / プロスタグランジン / 酸素化 / 血管内皮細胞 / 弾性線維
研究実績の概要

未熟児や先天性心疾患患児では、胎生期特有の血管である動脈管を人為的に閉鎖ないし開存させなくてはならない場合がしばしばある。動脈管閉鎖の分子機序を解明し、新たな治療法を開発することは、小児医療上、極めて重要な研究課題である。我々は、動脈管が将来閉塞すべき運命にある血管として、隣接する大動脈や肺動脈などの大血管には見られない血管構造と機能を有していることに注目し、その分子機序の解明を目指している。本研究では、「動脈管の分化・成熟を制御する分子機序を詳細に解明すること」を最終目的としており、平成27年度は以下の研究成果を得た。まず、酸素化が動脈管弾性線維形成に及ぼす影響についての検討を行った。ラット平滑筋培養細胞に対し、分泌されるタンパク質をLC/MS-MS法によって網羅的に分析を定量的に評価した。ラット動脈管平滑筋培養細胞から分泌されるエラスチンタンパク質は、低酸素から通常酸素濃度に戻したときに減少することが判明した。一方、collagen alpha2やMatrix Gla proteinは低酸素から通常酸素濃度に戻したときに増加することを見出した。次に母胎感染が動脈管弾性線維形成に及ぼす影響を調べた。妊娠ラットにリポポリサッカライドを投与し母胎感染症を生じた時の動脈管の機能的及び解剖学的閉鎖に及ぼす影響を観察した。リポポリサッカライドを投与された妊娠ラットでは全例絨毛膜炎を発症し、新生仔の動脈管閉鎖が遅延した。しかし、弾性線維や内膜肥厚などの血管リモデリングには影響を及ぼさなかった。 今後、感染が如何に動脈管閉鎖を遅延させるのかを、機能的閉鎖の観点から検討してゆく方針とした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究は概ね順調に推移しており、平成27年度には動脈管関連論文を3編発表することができた。

今後の研究の推進方策

I. PGE2-EP4刺激下における非cAMP経路の動脈管閉鎖機序の解明:EP4-Src- PLC経路が生体内においても弾性線維形成の抑制に働くことを確認するために、ラット胎生期動脈管組織において、Src- PLC経路が活性化しているか否かを調べる。さらにラット胎生期にSrc- PLC経路に特異的な刺激薬や阻害薬を投与し、弾性線維形成に及ぼす影響を観察する。
2. PGE2-EP4シグナル経路を介さない動脈管リモデリング因子の同定:酸素やエンドセリンが、動脈管リモデリングに関与しているか否かを明らかにする。また、ニワトリ胚には胎盤が存在せず、哺乳類の様にはPGE2-EP4シグナルが働いていないにも拘わらず、同様の構造変化が認められることからニワトリ動脈管のリモデリング因子を検討する。
3.動脈管内皮細胞特異的因子の役割の解明:平成28年度も引き続きTgfb2、Fgf10の動脈管での役割を検討する。
4.動脈管細胞外基質のリモデリングに果たす役割の解明:平成28年度も引き続き、Tenascin-N (Tnn)、biglycan、Novが動脈管リモデリングに与える影響を、mRNAやタンパク定量、組織免疫染色法、培養細胞実験などから検討する。

次年度使用額が生じた理由

3月に実行した大学院生の海外出張は当初、発表が不確定であったために予算に計上しなかった。その後、研究が進み、学会での発表が受理されたため、本予算より221,063円を支出することになり、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

研究が順調に進んでいるため、今年度の予算のうち、物品費から平成27年度に過剰となった金額を減額して研究を遂行する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 動脈管閉鎖の分子機序解明にむけて2016

    • 著者名/発表者名
      南沢享
    • 雑誌名

      日本小児循環器学会雑誌

      巻: 32 ページ: 2-8

    • DOI

      10.9794/jspccs.32.2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lipopolysaccharide delays closure of the rat ductus arteriosus by induction of inducible nitric oxide synthase but not prostaglandin E2.2016

    • 著者名/発表者名
      Kajimura I, Akaike T, Minamisawa S
    • 雑誌名

      Circ J

      巻: 3 ページ: 703-711

    • DOI

      10.1253/circj.CJ-15-1053

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Oxygenation decreases elastin secretion from rat ductus arteriosus smooth muscle cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Kawakami S, Minamisawa S.
    • 雑誌名

      Ped Int

      巻: 57 ページ: 541-545

    • DOI

      10.1111/ped.12684

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] プロスタノイドの動脈管閉鎖における役割2015

    • 著者名/発表者名
      赤池 徹, 横田 知大, 梶村 いちげ, 横山 詩子, 南沢享
    • 学会等名
      第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-07-16 – 2015-07-18
  • [学会発表] シクロオキシゲナーゼ阻害薬は鳥類動脈管を収縮させる2015

    • 著者名/発表者名
      赤池 徹, 伊藤 伶奈, 齋藤 綾子, 梶村 いちげ, 南沢 享
    • 学会等名
      第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-07-16 – 2015-07-18

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公開日: 2017-01-06  

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