研究課題/領域番号 |
26293253
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伏木 信次 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80150572)
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研究分担者 |
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80243301)
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), 再生医療研究室, 室長 (80344175)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胎児医学 / 脳形成障害 / 神経幹細胞 |
研究実績の概要 |
①FGFR3遺伝子安定発現NSCの樹立:正常ヒト由来のNSCに点変異を持つFGFR3遺伝子を導入することでTDモデル細胞の樹立を試みた。正常由来NSC、FGFR3-K650E変異を持つNSC、FGFR3-R248C 変異を持つNSCの3種類の細胞より、それぞれFGFR3-wild、FGFR3-K650E、FGFR3-R248CのcDNAクローニングを行い、発現ベクターを構築した。レンチウイルスベクターを用いて、ZsGreen蛍光蛋白発現を指標として遺伝子導入細胞をセルソーターで分取することで正常NSCに空ベクター、FGFR3-wild、FGFR3-K650E、FGFR3-R248Cの各々を導入したラインを樹立した。HEK293T細胞内におけるFGFR3蛋白の存在状態の特徴として、K650E変異体は顕著な自己リン酸化状態にあることが観察された。いっぽうR248C変異体は顕著な二量体形成が観察された。 ②NSC由来in vitro大脳様オルガノイド(ミニブレイン)作製法の樹立:神経幹培養細胞からミニブレインを作製する方法を樹立すべく、培養液組成と培養環境の条件を試行錯誤した。未発表のため詳細は示さないが、特殊環境下にてNSCからミニブレイン様の構造体を作製するに至った。内部構造の状態を把握するために切片作製後の免疫染色で細胞マーカーを検討した結果、神経細胞に分化した層とグリア細胞に分化した層がある規則性をもって区画化された状態で自発的に構造体を造り上げている様が捉えられた。 ③in vitro TDモデルの作製への試み:FGFR3遺伝子安定発現NSCを用いてミニブレインを作製することで、in vitro TDモデルを構築する本項目が本年度後半で開始された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①FGFR3遺伝子安定発現NSCの樹立 正常ヒト由来のNSCに点変異を持つFGFR3遺伝子を導入することでTDモデル細胞の樹立を試みた。初年度では、インテグラーゼと共導入することでNSCゲノム内にFGFR3遺伝子を挿入する方法を試みたが、NSCゲノム内への挿入効率が悪く現実的でなかったため、レンチウイルスベクターによる発現に切り替えた。 ②NSC由来in vitro大脳様オルガノイド(ミニブレイン)作製法の樹立 神経幹培養細胞からミニブレインを作製する方法を樹立すべく、培養液組成と培養環境の条件を試行錯誤した。培養液組成や支持体の有無、培養容器の形状・分化誘導環境をそれぞれ複数種組み合わせて試した。これら条件の設定は、神経幹細胞を材料にミニブレインを作製する前例がなかったため、ES細胞またはiPS細胞を用いて行われた研究報告の情報を取り入れて行った(参考文献①Nature. 2014 Dec 18;516(7531):400-4. doi: 10.1038/nature13863. ②Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Dec 10;110(50):20284-9. doi: 10.1073/pnas.1315710110.)。27年度後半に、ミニブレイン)作製法の樹立に至った。 そのため、想定以上の時間を要し、当初の予定より研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
① FGFR3遺伝子安定発現NSC由来in vitro大脳様オルガノイド(ミニブレイン)の作製と解析 レンチウイルスベクターを用いて、正常ヒト由来NSCに点変異を持つFGFR3遺伝子を導入することで、NSCに空ベクター、FGFR3-wild、FGFR3-K650E、FGFR3-R248Cの各々を導入したラインを樹立した。平成27年度に、独自の培養液とロータリーベセルを用いて、ミニブレイン構築法を確立しており、平成28年度は当該構造体の詳細な解析を継続する。ミニブレイン構造体の評価方法として、薄切後あるいはホールマウントの組織を用いて、各種細胞マーカー分子を対象とした免疫染色、in situ hybridization、軸索ラベルなどにより、細胞分化動態、神経細胞遊走、神経突起伸長、シナプス形成、異常分子の発現をさらに解析する。FGFR3シグナリングの下流シグナル分子のリン酸化状態にNSCライン間で差異を認めており、各種変異型FGFR3を発現させたNSCから作製したミニブレインに関して、遺伝子発現解析や細胞分化マーカーによる性質決定を行うことで、TD病態の理解に繋がるものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
FGFR3遺伝子安定発現NSCの樹立ならびにNSC由来in vitro大脳様オルガノイド(ミニブレイン)作製法樹立のための研究が、ヒト神経幹細胞の倍加スピードが遅いことも相まって遅れた。平成27年度の終盤で、FGFR3遺伝子安定発現NSCを用いてミニブレインを作製することで、in vitro TDモデルを構築する研究が開始された。そのため、27年度内に消費する消耗品予算を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
1) FGFR3遺伝子安定発現NSC由来in vitro大脳様オルガノイド(ミニブレイン)の作製と解析 平成27年度に3Dミニブレイン構築法を確立し、平成28年度は当該構造体の詳細な解析を継続する。ミニブレイン構造体の評価方法として、薄切後あるいはホールマウントの組織を用いて、各種細胞マーカー分子を対象とした免疫染色、in situ hybridization、軸索ラベルなどにより、細胞分化動態、神経細胞遊走、神経突起伸長、シナプス形成、異常分子の発現をさらに解析する。
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