研究課題/領域番号 |
26293256
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
島田 眞路 山梨大学, その他部局等, 学長 (10114505)
|
研究分担者 |
川村 龍吉 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (70262657)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | HSV / IL-33 / Alarmin / マスト細胞 / ケラチノサイト |
研究実績の概要 |
皮膚ウイルス感染における自然免疫機構の解明を目指し、世界で最も感染者が多いとされるHSV感染に対する初期宿主免疫応答機構を検討した。我々は、HSV感染に対する初期宿主免疫応答機構において肥満細胞が重要な免疫学的役割を果すことを報告しており、既に当科オリジナルなマウスHSV感染モデルを樹立している(Aoki R.& Kawamura T. et al.J Invest Dermatol,2013)。そこで生体防御における “alarmin”として最近注目されているIL-33のHSV感染初期における免疫学的役割を検討した。 1)マウスHSV感染皮膚におけるIL-33産生は同感染皮膚より得られるHIS titerと相関しており、また2)in vitro HSV感染ケラチノサイトからのIL-33産生は、ダメージを受けたケラチノサイトかに優位に認められ、さらに3)口唇ヘルペス患者の病変部水疱蓋のケラチノサイトにおいてもIL-33の著名な産生が確認されたことより、ヒトにおいてもHSVに感染した表皮ケラチノサイトが“alarmin”(Danger signal)としてIL-33を放出して、HSV感染に対する初期宿主免疫応答が誘導されることが示唆された。 次に、IL-33受容体であるST2を欠損したマウス皮膚にHSVを皮下注射したところ、正常マウスに比べて有意に低い生存率が観察された。このST2欠損マウス皮膚に野生型マスト細胞を再構築するとその死亡率は有意に改善されたが、ST2欠損マスト細胞を再構築してもその生存率に変化は認められなかった。これらの実験結果から、IL-33を介したマスト細胞刺激はHSV排除に重要な役割を果たすことが示唆された。 以上より、HSVがケラチノサイトに感染するとalarmin:IL-33が産生され、マスト細胞のTNF-α, IL-6産生を誘導してウイルスを排除することが示唆され、HSV感染ケラチノサイト由来のIL-33がHSV感染初期における宿主防御機構に重要な役割を果すことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚ウイルス感染における自然免疫機構の解明を目指した本研究において、今年度の研究成果は、HSV感染に対する初期宿主自然免疫応答機構の一端を明らかにした本研究成果は最近J Invest Dermatol,にアクセプトされた(Aoki R.& Kawamura T. et al.J Invest Dermatol,2016 In press)。
|
今後の研究の推進方策 |
ATPなどの他に生体防御において “alarmin”として注目されている分子のHSV/HIV感染初期における免疫学的役割を検討したい。また、性行為HIV感染におけるウイルス侵入阻害薬の開発も同時に進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験を進める過程において、生体防御に関わるIL-33以外のAlarmin分子群についても実験する必要性が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ATPなどの生体防御において最近注目されている分子群のHSV/HIV感染初期における免疫学的役割を検討する。さらに性行為HIV感染におけるウイルス侵入阻害薬の開発も同時に行う。
|