研究課題/領域番号 |
26293260
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
林 朗子 (高木朗子) 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (60415271)
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研究分担者 |
田中 昌司 上智大学, 理工学部, 教授 (30188304)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 樹状突起スパイン / コンピューテーション / 統合失調症 / カルシウムイメージング / DISC1 |
研究実績の概要 |
シナプスは統合失調症の病態に関与すると考えられ、各種モデル動物においてもシナプス異常が再現されている。しかし、シナプス異常と個体レベルの行動とが如何に関連するかは実際のところ未解明であり、おそらく実験的に両者の直接的因果関係をメカニズムまで踏み込むことは困難と考えられる。そこで本申請では、モデルマウスのウエットデータから特徴的な要素を抽出してモデル化する(シミュレーション)。そのための実データを蓄積するために、SZモデルであるDISC1ノックダウンモデルの確立に注力した。DISC1は神経発達期に持続的に発現し、神経遊走や神経突起伸展などに関与するため、樹状突起形成が終了した後にDISC1がノックダウンするようにERT2-CRE-ERT2とDIO-miRNA DISC1を組み合わせ、興奮性神経細胞のシナプス後部におけるDISC1が主としてノックダウン出来るコンディショナルDISC1ノックダウンマウスを作成した。このマウスにおいては、生後40日ではスパインサイズや密度の異常がないものの、生後60日後には従来型のコンベンショナルDISC1ノックダウンマウスと同様に、巨大スパイン(スパイン頭部径>0.6 umと定義)が有意に多いという結果が得られた。また巨大スパインの分布を調べた結果、Tuftなどの遠位樹状突起に多い所見が蓄積しつつある。遠位樹状突起はNMDAスパイクなどの局所スパイクが神経発火に与える影響が大きいため、遠位樹状突起にある巨大スパインへのシナプス入力、局所スパイク、神経発火の関連を検証していく。そのためのマウス前頭野の急性スライス標本の最適化、カルシウムイメージングの最適化、ホールセルレコーディングの最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回新しく作成したコンディショナルDISC1ノックダウンマウスにおいても、従来のコンベンショナルノックダウンマウスと同様の所見が得られ、またそのスパインの体積分布は非常に興味深い新規の知見である。巨大スパインが樹状突起のコンピューテーションに与える影響をみるためのカルシウムイメージングやホールセルパッチクランプの準備も整いつつあり、計画は概ね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コンディショナルDISC1ノックダウンマウスのスパインの体積分布や密度など、DISC1ノックダウンマウスでとりわけで顕著に観察される現象である“巨大スパイン”の解析を前年度に引き続き行う。本格的に単一ニューロンのスパインを詳細に解析し、具体的には、巨大スパインが錐体細胞のどの樹状突起に分布しているかを近位、遠位にわけて定量的に解析する。また巨大スパインがどの程度クラスターリングするかを解析する。これらの知見では電気生理実験やモデリングとも密接に関係するので、最優先で行う。同時に神経発火頻度・発火パターンをin vivo Ca2+イメージングにより解析する。カルシウム指示薬としてはGCaMP6fをもちいる。またシナプスへの神経入力と活動電位の発生の時間的関連を模索するために、前頭野より作成した急性脳スライス標本を作製し、シナプス入力はGCaMPfの蛍光輝度で、活動電位の発生は電気生理学的に検出する。 上記実験データに基づいたシナプス体積分布と密度と、細胞体において計測された発火頻度とがどのような関連があるのかをモデリングする。モデリングは上智大学の田中昌司が担当する。年に数回のDiscussionを通じて、モデルと実測結果の整合性や展開などを議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
チタンサファイアレーザーの修繕費として計上していたが、該当年度で修繕の必要がなかったため、次年度で使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
チタンサファイアレーザー内のLDカレントを見る限り、H29年度にレーザーの修繕が必要と思われる。修繕が必要となった時点で速やかに修繕作業を行うために費用として使用する。
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