研究課題
我々のPET研究(Suzuki et al., Arch Gen Psychiatry 2011)の結果から、自閉スペクトラム症(ASD)者の脳内コリンエステラーゼ活性は紡錘状回をはじめとする広範な脳部位で低下していること、紡錘状回のコリンエステラーゼ活性が低いほど社会性の障害が重度であることが明らかになった。すなわち、ASDの社会性の障害におけるコリン系の機能不全の関与が示唆された。そこで、本研究では、脳内ニコチン様アセチルコリン受容体を特異的トレーサーとポジトロン断層法(PET)により計測し、ASDの臨床症状との関連について調べた。対象は成人ASD者、および、年齢・性別・知能指数を適合させた定型発達者とした。他の精神神経疾患を合併する者、薬物療法を受けている者、および、喫煙者は除外した。ASDの臨床症状をADOS、ADI-R、感覚プロフィールにより評価し、顔認知障害を注視点検出装置により評価した。その後、ニコチン様アセチルコリン受容体α7サブタイプ(α7-nAChR)の特異的トレーサー[11C]Me-QAAを用いPET計測した。[11C]Me-QAA結合能のパラメトリック画像を作成し、Statistical Parametric Mapping (SPM8)による全脳レベルでの統計解析に供した。すなわち、ASD群と定型発達群との[11C]Me-QAA結合能の差の有無、および、臨床指標と[11C]Me-QAA結合能との相関の有無について検定した。全脳レベルで得られた有意な所見については、関心領域(ROI)を設定する方法で確認した。平成28年5月末までにASD群20名、定型発達群20名のPET計測を終了した。その結果、α7-nAChR結合はASD者で低下しており、特に前頭葉で顕著であることがわかった。得られた成果は英文学術誌に投稿予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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