研究課題/領域番号 |
26293266
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
池田 匡志 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60424933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精神科遺伝学 |
研究実績の概要 |
HLAを含むMHC領域は、統合失調症の全ゲノム関連解析の結果、遺伝要因として確実なリスクとして認識されている。しかし、この領域は、非常に複雑な連鎖不平衡や遺伝子構造のため、真の疾患感受性を有する遺伝子多型の絞り込みは不可能とされ、単なる「リスク領域」としてのみの位置づけである。本研究では、過去に十分なサンプルサイズを用いた解析を行っていない古典的HLAに再度焦点を当て、リスクとなりうる特定のHLAアレルを同定することにある。その後、同定されたアレルと親和性のある分子を予測・確認することで、機能的な意義の確認に踏み込んでいくことを目的とする。 平成26年度は、全ゲノムSNP解析の結果(HLAを含むMHC領域での関連)をvalidateするために、統合失調症2000名と正常対照者約1000名のHLAタイピングを行った。その結果は、驚くべきことにHLAにおける特定のアレルとの有意な関連は得られていない(最も有意な関連はHLA*B:4006で、P=4E-4であり、多重比較を考慮すると現在のところ有意ではない)。 今後は、正常対照者のサンプル数を増加させることで検出力をアップさせ、より確からしい結果を得るように追試を進める。 また、HLAに着目するに至った全ゲノムSNP解析の結果(HLAを含むMHC領域にはsuggestiveな関連を得ている)を確認するため、SNPベースの解析をさらに進める必要がある。すなわち、独立した統合失調症-正常対照者を用い、候補SNP(現時点で関連傾向にあるSNP)に関して追試を実施する。本解析でHLA領域に関連が残り、かつ 特定のHLAアレルで関連が認められない場合は、HLA以外の遺伝子(non-HLA遺伝子)の関連を示唆するものであり、本検討は必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常対照者のHLAタイピングの実験が最適化困難であった理由で遅れ気味であったが、最適化は終了し、現在解析中である。平成27年度早々に結果が確認できる。
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今後の研究の推進方策 |
HLAの関連に決着をつけることが最重要である。すなわち、有意な関連が得られれば、特定のHLAアレルがリスクとなりうることが証明できる一方、関連がnegativeであれば、おそらく頻度の高いHLAアレルはリスクとならないことがわかる(稀なHLAはどのようなサンプル数を用いても擬陰性の可能性は否定出来ない)。後者の場合は、SNPベースの解析結果を鑑みると、HLA以外の遺伝子、すなわちnon-HLA遺伝子が関連している可能性もあり、その場合は、次世代シーケンサーを用いたターゲットリシークエンスなど別の詳細マッピングが必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAの精度の問題などで、実験の最適化に遅れが生じたため HLAタイピング一時解析の結果、予想外のnegative resultが予想され、もう一度基盤となった全ゲノムSNP解析の検出力を上げる必要があると思われたため
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次年度使用額の使用計画 |
最適化は完了し、また、SNPに関してもサンプル調整は終了しているため、すみやかに実験解析が可能となっている。
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