研究課題/領域番号 |
26293270
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三浦 富智 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20261456)
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研究分担者 |
阿部 悠 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (00722472)
葛西 宏介 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (50400148)
吉田 光明 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (60182789)
坂井 晃 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70284221)
中田 章史 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (70415420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 緊急被ばく医療 / バイオドシメトリー / PCC法 / 放射線個人感受性 |
研究実績の概要 |
未成熟染色体凝縮(PCC)法では,主に環状染色体頻度を指標として被ばく線量推定が行われる。三浦等は,PCC法においてG2/M-PCC:G1-PCC比(cell-cycle progression index,CPI)が全身被ばくモデルにおいて被ばく線量と相関することを報告した。本研究ではヒト末梢血部分被ばくシミュレーションモデルを用い, 環状染色体解析に適した細胞周期を明らかにするとともに,CPIと環状染色体頻度の有用性を比較した。ヒト末梢血に1~10GyのX線を照射後,各線量において非照射血液と任意の割合(0,20,40,60,80,100%)で混和した。DNA修復後に単核球画分を分離し,三浦等の最適化PCC法を行った。染色体標本をギムザ染色し,各標本においてG2/MおよびM/A-PCC細胞像を1000細胞撮影し,環状染色体頻度を測定した。さらに,血液培養中の炎症性サイトカインの影響について検討した。M/A-PCC細胞における環状染色体出現頻度はG2/M-PCC細胞に比べて高かったが,M/A-PCC細胞が少なく,線量との相関が低いことからG2/M-PCCが環状染色体解析に適していることが明らかとなった。また,環状染色体頻度はCPIと同様に線量および混合率依存性に増加したものの,CPIは環状染色体頻度に比べて線量および混合率と高い相関を示した。さらに,CPIは染色体の凝縮程度やfuzzinessの影響を受けにくいため,線量スクリーニングにおける線量評価指標として有用であることが示唆された。また,弘前市住民約1000人の末梢血TNF濃度を測定した結果,中央値33pg/ml,最大値460pg/mlであった。さらに,健常人ボランティアの末梢血に2Gy-X線を照射後,TNF刺激下で血液培養を行なった結果,33pg/ml TNF刺激下において1.15倍,330pg/ml TNF刺激下では1.37倍にDIC頻度が増加した。この結果は,個人の炎症状態により染色体異常頻度が異なることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体の染色体異常解析において、感染病院から送付された血液を用いた場合、細胞の分離状況が好ましくない。この状況を改善するため、現地ので細胞分離や分離法の改良を検討する必要がある。また。放射線治療の患者さんの血液を確保するのが遅れており、今年度は4名分しか確保できなかった。協力病院を拡大させるよう、現在調整中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、複数の協力機関と連携し、糖尿病および放射線治療の患者様の血液確保に注力する。また、今年度の解析においてTNFの影響により染色体異常が増加したことから、他のサイトカインの影響についても詳細に検討する。さらに、今年度問題となった、血液の分離法の改善を早急に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は放射線治療患者様の検体数が少なかったため、解析に要した消耗品費が少なく、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
協力病院を拡大させて検体の確保に注力し、今年度の繰越金を使用する予定である。
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