研究課題
細胞の低酸素応答で重要な役割を果たす低酸素誘導性転写因子HIF-1(hypoxia-inducible factor 1)は、がんの放射線抵抗性や放射線治療後の再発においても機能することが指摘されている。本プロジェクトで我々は、HIF-1の活性化を担う上流因子を探索し、がんの放射線抵抗性メカニズムを解明することを目指して研究を進め、以下の成果を得た。まず、HIF-1の活性化を担う上流因子を網羅的に探索するために、遺伝学的スクリーニング法を確立した。そして、IDH3、UCHL1、LY6Eを、新規HIF-1活性化因子として同定した。各遺伝子がHIF-1を活性化するメカニズムにアプローチし、まず、IDH3の過剰発現によって細胞内αケトグルタル酸量が低下し、HIF-1α蛋白質の安定性と転写活性化能が上昇することを見出した。また、UCHL1がHIF-1αの脱ユビキチン化を介してHIF-1活性を亢進することを明らかにした。さらに、LY6EがPI3K-Akt経路依存的にHIF-1α遺伝子の発現を転写レベルで増加させることを発見した。また極めて重要なことに、各遺伝子の腫瘍内発現レベルが高い場合、がん患者の生命予後が不良であることを見出した。これらの遺伝子の放射線抵抗性への寄与については、例えばUCHL1-HIF-1経路の活性化によってグルコース代謝経路が解糖系とペントースリン酸経路優位な状態にリプログラミングされること、そしてその結果としてNADPHと抗酸化物質GSHの産生が促され、がん細胞が放射線抵抗性を獲得することを明らかにした。この様に、がんの放射線抵抗性獲得機構について新たな遺伝子ネットワークを解明し、放射線抵抗性の克服に向けた道を拓くことが出来た。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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