研究課題/領域番号 |
26293277
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
一戸 辰夫 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80314219)
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研究分担者 |
三浦 康生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70605146)
前川 平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80229286)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 被ばく医療 / 組織再生治療 / 造血細胞移植 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高線量放射線被ばく後の急性放射線症候群および晩発性放射線障害に伴う臓器障害全般に対して、造血幹細胞移植と間葉系幹細胞(mesenchymal stem/stromal cells, MSC)移植の特性を最大限に利用した包括的な新規細胞治療法を開発するための根拠となる知見を得ることである。 平成27年度は、全身放射線照射を行ったマウスに対して、骨髄由来MSC(BM-MSC)と造血幹細胞の共移植実験を行い、特に同種造血幹細胞を移植した後に見られる急性移植片対宿主病に対して、MSCに由来する新規物質の投与が有効であることを見出した。現在までに、その物質による免疫抑制作用、消炎作用が投与量依存的であることを確認しており、その物質特性と作用機序の解明に着手している。 また、平成26年度に続き、さまざまなγ線照射がヒトBM-MSCの増殖能、分化能、造血前駆細胞支持能、血球分化系列決定能等に与える影響を検討し、100 mGy程度の低線量放射線照射によっても、BM-MSCの増殖能・骨分化能・脂肪分化能に負の影響が出現するが、CD34+CD38+造血前駆細胞の増殖支持能はむしろ亢進することを明らかにした。さらに、このようにBM-MSCの造血支持能を増強する生理活性物質の候補がビタミンKであること、MSCから骨芽細胞への分化過程において、特に造血前駆細胞に対する強い増殖支持作用を有する段階の細胞が存在することを見出し、そのような分化過程に放射線が与える影響についても検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、本年度に予定していた研究計画である凍結保存が可能な治療用MSCをヒト臍帯血から高効率で樹立する技術の開発を前年度までに終了し、すでに論文公表も行っていること、MSCの有するCD34陽性造血前駆細胞支持能を増強する候補物質も二種類同定できていることから、当初より順調に進展していると評価できる。造血幹細胞とMSCの共移植や、共移植による組織修復効果をすでに同定しているMSCの機能賦活物質が増強可能であるかを検証するためのマウスモデルもほぼ確立しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究の最終年度にあたるため、平成26年度/平成27年度に引き続き、2つの研究機関の間での緊密な共同研究体制を維持しつつ、小動物を用いた治療モデルによってこれまでに得られた知見の総合的な妥当性を検証する。また、平成27年度の研究過程で、間葉系幹細胞による組織修復・抗炎症効果の発現機序にかかわる新規構造物を発見したため、その特性を明らかにすることを通じて、新たな創薬のシーズを本研究の副産物として提供することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な生化学試薬の費用を節減した結果、物品費の支出額を予算額以下とすることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の実験に必要な生化学試薬の購入、動物実験費用、国際学会発表旅費、論文投稿に要する費用などに使用する予定である。
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