研究分担者 |
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
浦田 芳重 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (30185087)
後藤 信治 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (50186889)
小野 悠介 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 講師 (60601119)
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研究実績の概要 |
本年度は、放射線誘発心臓幹細胞障害の線量依存性と回復可能性について調べた。 健常雄性成獣マウス(12週齢C57BL/6)に0, 10, 50, 250 mGy/日のγ線を1週間連続で全身照射し(累積線量は0, 70, 350, 1750 mGy)、照射終了の24時間後にマウスを犠牲死させ、心臓幹細胞の数と機能を様々なパラメーターを用いて評価した。その結果、心臓幹細胞におけるc-kitの発現、telomerase活性、DNA傷害は線量依存性に有意な傷害影響を示された。しかし、心臓幹細胞の数、CD90の発現、および心臓幹細胞からVEGFやIGF-1の産生については明らかな線量依存性傷害を検出できなかった。 また、健常成獣マウスに3 Gyのγ線を全身照射し、照射終了1,3週間後にマウスを犠牲死させ、心臓幹細胞の数と機能を様々なパラメーターを用いて評価した。その結果、心臓幹細胞からVEGFやIGF-1の産生機能は照射終了の1週間後に、また、心臓幹細胞の数およびCD90の発現にも照射終了の3週間後に、正常までに完全に回復した。一方、心臓幹細胞におけるc-kitの発現、telomerase活性、DNA傷害については、照射終了3週を経っても正常までに完全な回復が認められなかった。 以上の研究結果から、心臓幹細胞におけるc-kitの発現、telomerase活性、DNA傷害は、放射線誘発心臓幹細胞障害の評価に敏感かつ安定的なパラメーターであることを明らかにした。組織内に生息している数の少ない幹細胞は、組織臓器の再生修復や恒常性維持に中心的な役割を担っているため、放射線後早期の心臓幹細胞の数および機能の変化を調べることにより、将来の心血管疾患リスクを間接的に的確に評価できると思われる。
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